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問屋の仕事場から

2018.01.26
結城紬の良し悪しの見分け方

段ぼかしの結城紬

地機織の本場結城紬(以下結城紬)は最高の風合いを持つ織物として広く認められています。結城紬は検査組合の厳しい検査基準を経て流通します。ところが結城紬の中でもその風合いに良し悪しがあることはあまり知られていません。

結城紬の良い風合いとは何ぞやということですが、出来るだけ地風がフワッとしていて温かみを纏っているものだと考えてください。良いものと悪いものを並べて触り比べてみればその差は微弱なものですが、肌感覚としてしっかりわかります。

しかし結城紬は糊が抜かれていない状態で流通しており、本来の風合いがわかりません。素人が一見して結城紬の風合いの良し悪しを見極めるのは困難なのです。それでは結城紬の風合いの良し悪しを見分けるにはどうすればよいのでしょうか。

それは糊抜きをしていない生地でも表面を撫でてみることです。

うっすらとしたパステルカラーの結城紬

良質の糸を使って織られた結城紬、表面のガサツキが少ない。

風合いが良いであろうなと思う結城紬は表面のガサツキが抑えられています。これは糸質と織手の能力に起因してます。結城紬は節糸を有する紬であり糊が入ったままである以上、どうしてもサラッとはいかないのですが、風合いが劣る品物は表面にどこかガサガサ感があるのです。

結城紬の極上の風合いは独自の手紬糸に理由があります。真綿袋から糸を直接ズリ出す無撚糸、とても手間のかかる工程のため、結城紬一反分の糸代だけで10万円するというほどです。そして作業者の習熟度によってその糸質は大きく異なります。糸取名人と呼ばれる人ほど節の少ない糸をプイプイと早くつむいでいきます。節の多い少ないは織り上った際の表面のガサツキ具合に影響を与えるのです。

糸取道具

一ボッチ(桶一杯分80g)をとるのに一週間前後かかり、その作業のほとんどが内職で行われている。

この名人のつむいだ糸を使い、熟練の織り手が地機(イザリ機)で魂を込めて織ることで最高の風合いを持つ織物が出来上がります。織り手のレベルが低いとこれも表面がガサガサになってしまいます。人機一体となる地機で織ることは織り手の技術、クセが反物の出来にダイレクトに影響します。

織り手にはできるだけ織りムラを作らない髙い技術が要求されるのです。楽して打ち込みを甘くしていると緯糸に隙間ができ検査不合格になりますし、体調や疲労に左右されても打ち込みの強さが変わりムラにつながります。リズムよく一定の力で杼を打ち込み続ける能力が必要なのです。

機織り娘

地機織りは糸に負担をかけず生地の風合いを豊かにするが、上手く織らないとムラやクセにつながりやすい。

良い糸(節が少ない)ばかりを集め、うまい織り手が製織することで初めて生地は理想的な状態になるのです。

縞屋の屋号に注目

風合いの良し悪しを表面から確認する方法は、ある程度結城紬に触れてきた人でしか判別することは難しいかもしれません。実はもう一つの方法で外見から判断することも可能です。

それはどこの縞屋を経て流通してきたかで商品の性格を考察することです。

結城紬には本場結城紬卸商協同組合の証紙が張られており、その中央の証紙には縞屋の屋号が押印されています。この縞屋の組合が本場結城紬卸商協同組合でその屋号の種類が組合のページで詳しく解説されていますので参考にしてください。

結城紬の証紙

証紙に縞屋の屋号印(マル結)、これは結真紬(既に会社清算済)のもの。

縞屋とは問屋制家内工業である結城紬の生産を仕切る産地問屋のことで、分業制である結城紬の製作総指揮をとるポジションです。昔は結城紬といえば「縞」柄であったことからそう呼ばれています。結城紬はその原始的な工法を遵守するため、多大な工数を要し、時には完成までに一年を越えることもあるほどです。糸をはじめとする材料の手配には資金が必要で、しかも織りあがる間にも作業者に賃金を支払い続けなくてはなりません。

そして実際にモノづくりに従事する人々の本業は農業が多く、結城紬の製造のみに没頭し続けるわけにはいかないのです。

田植えや収穫の時期には紬を製造している場合ではない。

そこで資金力、情報力(世間の需給情報)を有する産地問屋が生産管理を行います。機屋と共同で工程管理、品質管理までを行い、風合いの命である糸質までにチェックが及びます。良質の糸を確保し良い織手に作らせることは縞屋の采配次第ともいえるのです。

結城紬の命といえる手紬糸、糸を確保して初めてもの作りが行われる。

ところが生産効率やコストを追及するために結城紬の命ともいえる糸質が犠牲になることがあります。昔から比べると糸取り名人が少なくなったこともあり、全体的に品質は低下傾向にあります。さらには外国で作られた怪しい糸を使ったものや、どこで織られたか素性のはっきり分からない物も。混沌とする状況の中で、信頼できる糸を確保して製造指揮するのが縞屋の腕の見せ所でもあり、プライドともいえるでしょう。

結城紬の卸商のメンバー

結城紬卸商組合員、実質的に稼働しているのは半数ほど 組合のHPより

この縞屋がどの様な性格の会社であるかを見極めることが、一定の品質の目安となるわけです。複数の結城紬にふれる機会があれば縞屋の屋号印に注目して触り比べてみてください。特定の縞屋のすべての商品が最上の風合いというわけにはいきませんが、縞屋ごとに商品の性格、品質の傾向が見えてくるものです。

結城紬卸商協同組合に属している縞屋は従業員を多数抱える企業、家族経営の会社、個人商店、実質的に稼働していないところその形態は等様々です。廃業するところも増え始め、取り巻く状況も厳しさを増してきました。一般の方が縞屋のことを知るのは難しいかもしれませんが、Webなどで積極的に情報発信しているところもありその「人となり」をうかがい知ることができます。

廣田紬では長年、傍系会社の結真紬という縞屋を経由して結城紬を製造していました。選ばれた良質の糸のみを使ったその風合いは確たるものでしたが、残念ながら後継者難の問題もあり数年前に廃業となっています。

紬問屋の外観

廣田紬社屋と共通の黒漆喰が特徴の結真紬店舗、現在は国の登録有形文化財である。

現在廣田紬では信頼のおける縞屋を経由してのものづくりを行っています。そして出来るだけ良い商品を作るために反物ごとに誰が糸を取り、織ったかといったトレーサビリティがとれるよう(品質改善が可能)に管理を行っています。それでも昔から比べると風合いがどうしても劣ったものが増えていると感じています。全体の生産量が縮小(ピーク時の4%)し作り手が激減する中、良質の糸の確保が難しくなってきているのは仕方がなく残念です。

糸が良かった頃の商品、近年は一反分の糸をとるのに6人がかりなんてことも。

結城紬を選ぶとき、通常は色柄が最優先になるかもしれません。しかしせっかくの結城紬ですから風合いの良し悪しにも目を向けてみてください。そして廣田紬では結城紬の別誂えが可能です。満足のいく風合いの商品を提供できるようしっかりと対応させていただきます。

納期は要しますが安心してお待ちいただければ幸いです。

 

 

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