沖縄の染色文化を代表する「琉球びんがた」、和装用途では絹の帯…
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問屋の仕事場から
- 2019.05.16
- 芭蕉布の白生地
最高級織物の一つである喜如嘉の芭蕉布、伝統柄の絣や花織をあしらった商品展開がされていますが、無地の状態から紅型などで後染めすることも可能です。
白生地といっても実際に白いわけではなく、糸芭蕉独自の暖色系の色味を帯びています。同じ靭皮繊維の手績み糸を使う越後上布の白生地も本来は自然素材そのままの色味がありますが、漂白によりまっ白となっているのです。芭蕉布も仕上げの工程に漂白(コメと芋を発酵させたものに浸ける)を行いますが、完全に脱色されて真っ白になるわけではありません。漂白剤を使って無理やり脱色、漂白することは不可能ではないですが、自然布らしい透明感のある美しさは失われてしまうことでしょう。
今回紹介するのは名古屋帯用の生地、九寸帯と八寸帯のタイプ、
裏生地をつけて、帯芯を入れて仕立てる九寸帯には細い糸が使用されており、やわらかく繊細な質感です。
一方、端をかがる必要のない八寸帯用は糸がかなり太く、しっかりとしたコシのある生地感になっています。
両者を巻反の状態で並べるとその差は一目瞭然、
仕立ててしまえば形状は同じになりますので、質感の好みの問題です。
さて、このまま無地の状態で仕立てても素晴らしい自然布の帯になりますが、様々な後加工も施すことができます。
芭蕉布を後染め加工するには高い技術が求められ、最適な湿度コントロールが必要なため、乾燥した時期を選んで加工しないといけません。また手描き友禅のような筆で染料を含ませていく工程については困難を極めることになります。顔料を使う紅型や刺繍などの加工が適している素材といえるでしょう。
原料の栽培から一貫して行われる喜如嘉の芭蕉布は、数ある伝統工芸織物の中でも間違いなく最高級品と言えます。生産数は帯地を中心に年間100反余り、ほとんどが帯で伝統柄の絣や花織をあしらったものになります。各々素晴らしいものに間違いないのですが、好きな柄を染めたり刺繍を施したりすることで芭蕉布の魅力を更に引き立てることができます。
従来の伝統柄にとらわれない自由な発想で加工された芭蕉布、どのような仕上がりになるか想像するだけでわくわくしてしまいます。