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問屋の仕事場から

2017.07.12
越後上布の白生地 〜最高の贅沢生地〜

越後上布の白生地

麻の最高級織物である越後上布、小絣や縞格子の柄が多いのですが後染め加工を前提にした白生地も存在します。最盛期は年間の生産数が20万反を誇った越後上布ですが、昔ながらの手法(重要無形文化財)で作られる本物は年間の生産数が30反ほどになってしまいました。その中でも更に織られることが稀な白生地を紹介します。

越後上布白生地の生地表面、全て違う太さの糸で織られている。

すべて人の手で績まれた苧麻糸を使い、それを地機で織り上げる。糸づくりから計算すると、一反の着尺を作るのに2回冬を越すことになります。大変な手間暇がかかった精緻な絣柄ですと数百万円という値段になります。

白生地はあまり手間がかからないものだと思われがちです。しかし後染加工をすることを前提にして織られるため、織ムラや糸の継ぎ目を目立たせない細心の注意が必要です。色や柄で織のエラーをごまかすことができないのです。こうして慎重に織られた白生地は、自然の風合いを残しながらも上質な最高級の麻地となるのです。

糸の束

苧麻の中でも影苧(かげそ)と呼ばれる最高のものが使われ、極細糸がつくられている。

生地の拡大

雪晒しのオゾン効果により漂白された越後上布。手績みの味が伝わる生地。

越後上布の白生地は雪晒しによって漂白されていますので、宮古上布の白生地のように暖色系の色味がかったものではありません。冬は雪に覆われる産地の情景をそのまま表現したような白です。

組織を拡大して見ました。

紡績糸と異なり、全て細さの違う苧麻糸であることがわかります。

越後上布の組織拡大、糸と糸を撚り繋いだ跡もみて取れる。

大変な手間のかかる越後上布の白生地、用途は高位の宗教関係者や神事向けなどがあります。また、後染めを施して色無地(諸々の理由で先染めでは製造せず)や抜き紋を入れたりそれぞれの「特別」な麻衣となります。

友禅を施して夏の訪問着などに使われることもあり、どのように染め上げられるかワクワクしてしまいます。

白い生地

こちらは緯糸の一部にのみ手績苧麻糸を用いた白生地、手織の風合いが十分に伝わってくる。

あの結城紬の白生地でさえ高額さのあまりおいそれと手が出せる染め屋さんは限られますが、さらに何倍もする越後上布の白生地、訪問着などの企画商品として作られることはないでしょう。

このような極上に贅沢な白生地が存在するということ、紋入れなどの後染め加工は自由にできるということを知っていただけるだけで幸いです。

人の手で作られた美しい糸の一本一本。


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