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問屋の仕事場から

2024.04.16
生産実績から見る結城紬の最新トレンド

一口に結城紬といっても無地、縞、亀甲柄、様々なデザインのものが作られています。生産統計の内訳から、最新の結城紬のトレンドを読み解いてみましょう。

令和5年度の結城紬の生産数は537反でした。全盛期は3万反を超えていたことを考えると恐ろしい減少ぶりで毎年減り続けています。ただ今年は対前年度比マイナス28反と落ち込みはしたものの、これまでのマイナス基調からするとまずまず踏ん張ったなというイメージです。

その内訳がどのようなものか解説いたします。

総生産数の537反の中には帯98本(地機54、高機 34、変わり織 10)が含まれますので、単純化するために帯を省いた数字(439反)の内訳を一覧表にしました。

なお、この数字は検査ベース(不合格品も含む)なので、統計外の数字として保存会や自治体向けに製作したもの、機屋が独自に作成して検査を受けないもの等がありますので実際にはもう少し作られています。

柄の種類ごとに円グラフにしてみました。

やはり無地が一番多く実質無地の白生地を合わせると40%程度、経緯絣22%、縞17%、たて絣16%と続きます。

 

地機と高機の比率は309反(地):130反(高)、地機は貴重品という先行意識があるかもしれませんが、地機の生産数が高機よりかなり多いのがわかります。絣物は全て地機で作られるべきという産地の自主規制(稀に帯で絣物の高機製が散見)があるため、絣物がすべて地機扱いになる形ですが、無地だけに注目すると49反(地):98反(高)と高機が地機の倍ほど作られています。

平織と縮織の比率は338反(平):101反(縮)となっています。一昔前は縮の生産比率が少なかったのですが、少し前まで2桁台の生産数だったことを考えると増えてきました。単衣の時期が長くなり、需要が増えていると推察されます。さらに縮織の半数以上が経絣の商品であることにも注目です。

昨年ブログで紹介した、もく(杢)カテゴリーは一反のみの生産と大変貴重な存在になっていることがわかります。全体で400反あまりの中、1点しか作られない危機的な状況にあるカテゴリーがあることがわかります。実は統計のカテゴリーには「200の組織」「120の組織」「袴」「ぼかし」など他にもあるのですが、これらは近年しばらく統計に乗ってきていません。「もく」が来年ゼロ計上にならないことを祈るばかりです。

また「絣もの」136点の種類を分けてみると、以下のようになります。

結城紬の絣の割合

経緯絣はほとんどが経緯100の組織(5本に1本の経絣糸比率)で、160、80はほとんど作られていません。82反の100の組織の割合をさらに詳しく解説すると、亀甲柄26反、十字絣柄3反、飛び柄45反、全面亀甲ベタが7反、その他1という構成になります。

 

生産数全体が非常に少ないので、どこかの問屋が大量に特定の柄を発注等なにか少し動きがあれば数字がすぐに動いてしまうケースありますが、ザックリとしたトレンドを掴むことができます。

十絣の細工の結城紬、昨年度は3反しか作られなかった。

少し注意しなければいけないのは、生産統計から見えてくるトレンドは生産のトレンドということで、必ずしも消費者が欲しい結城紬のトレンドと一致するわけではないということです。実際に需要の高い十絣がほとんど作れていないということは、作ることのできる業者(工程)が非常に少なくボトルネックとなっているということです。

以上、昨年度の結城紬の生産統計をひも解いてみました。トレンド云々記載していますが、今となっては全国の紬全体の生産量からすれば結城紬はどれもが超貴重品で、これからさらに希少性が増してきます。一つ一つがありがたい手仕事の塊で、生地の優劣、柄の類別などを論ずる幸せは今しかありません。統計を分類、云々言えるだけの生産数が維持されることを切に望みます。

 

 

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