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問屋の仕事場から

2022.11.06
高級紬は仕立てる前に湯通しが必要

呉服店の店頭に並ぶ反物、消費者に販売後に仕立てに回ることになりますが、品目によっては湯通しで反物についた糊落としをする必要があります。

湯通しを含めてとりあえず全て仕立て屋任せというお店も多く、仕立て屋さんが整理屋(湯通し業者)に出すか出さないか判断されるケースが多いようです。

湯通しが終わった反物、糊が落ちて10%以上軽くなった。

織物の糊付けはそれぞれ特性があり、整理屋さんも全てを熟知しているわけではありません。捌く仕事量のほとんどが染物なので織物はどちらかというと少数派、さらに高額品の結城紬や宮古上布などはイレギュラー品、さらに作家物など全く知見がないケースもあります。

 

結城紬、黄八丈、宮古上布などは湯通しが必要

絹、麻、綿といった素材にかかわらず製織の際には糸を糊で固めてから織ります。常に張力のかかる経糸の強度UPや、緯糸を通す際の滑りを良くする効果があるのですが、糊がついたままの反物は生地がゴワゴワした硬質感が残ります。

湯通し前の結城紬、ゴワゴワとした質感がのこる。

糊は酵素を使うことで落とすことができ、その工程を湯通し(整理)といいます。多くは湯通し済みで店頭に並びますが、一部の高級織物は糊がついたままで流通しています。

糊を落とさない理由は生地表面の保護のためで、高額だけに商品の回転率が悪く、売れるまでの長期間のあいだ色々な人が触れていると生地が毛羽立ってしまうのです。仕立てる前に湯通しをすることで流通過程でついた汚れも落ちるという仕組みです。

結城紬、大島紬、黄八丈、宮古上布、越後上布、能登上布などは原則湯通しが必要です。

※店頭でお客さんが風合いが確かめられるように、店頭に並ぶ際には湯通しをする専門店もごく稀にあります

湯通しの終わった黄八丈、しっとりとした風合いに。

湯通しが不要かどうかを見抜く方法

高級織物は湯通しが必要な傾向がありますが、作家物をはじめとする一部の商品は湯通しが終わっているものもあります。また、結城紬や大島紬でもなんらかの事情で湯通しが完了している反物もあります。低価格な商品だからといって、必ずしも湯通しが終わっているとは限りません。

読谷山花織、高級織物であるがお店に並ぶ状態では湯通しが終わっている。

丁寧に「湯通し済」の記載やシールが貼ってあるものもありますが、多くは目で見て判別できるものではなく、生地の風合いで判断することになります。

例えば、生地を触ってみてゴワゴワしていればバリバリに糊がついています。生地が薄い大島紬でも糊がついたままだとカサカサ感が残るものです。慣れが必要な部分もありますが、絹や紬の風合いではないと思ったら湯通しが行われていない可能性が高いです。

 

整理工程で行われる反物の幅揃え

大島紬の端が波打っていて仕立てが難しい、との問い合わせがあり現物を取り寄せてみました。たしかにその反物は生地が波打っていて仕立てが難しそうです。さらにご丁寧にパールトーン加工まで施されていました。

湯通しをする工程の中で反物の幅揃えも同時に行われます。織り手のクセや織りムラをそこで修正して波打っていた幅が均一になるようにするのです。

大島紬は平滑な絹糸を使う織物で、糊がかんでいるかどうか、他の織物と比較してわかりにくいという特徴があります。泥染めの商品では糊がついているにも関わらず、糊を落とした非泥染めの商品よりも「しなやか」という特殊品です。織物に詳しくない方が判断するのは少し難しいかもしれません。

今回のケースでは一度パールトーン加工を解いて、湯通し、幅揃え、さらにパールトーンをかけなおすという手間がかかることになりました。

以上、高級紬は原則湯通しが必要なことを覚えていただければ幸いです。

※廣田紬では原則として他店品や、一般消費者様からの湯通し依頼はお受けしておりません。

 

 

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