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問屋の仕事場から

2021.10.17
ちょうど良い「子鬼しぼ」の本塩沢

本塩沢と言えば、表面がシボ立つサラッとしたお召し織物ですが、「鬼しぼ」と呼ばれる更に強いシボをもつ商品があります。

鬼+しぼ、その名の通り表面が非常にシボ立っているということです。

友禅染めなどに使われるちりめん生地の中には「二越」ちりめん(古代縮緬)という種類があり、表面のシボが大変かさ高い(サラッと感が強い)ことから、こちらも鬼シボ縮緬と呼ばれています。緯糸に撚りの方向の異なる強撚糸(Z撚、S撚)が2本続けて交互に走る(ZZ→SS→ZZ→SS)ことで、表面に2本(二越)ごとの畝りを作り出すのです。

今回紹介の林宗平工房製の鬼シボ本塩沢、どのような商品かみていきましょう。

織り口に「鬼しぼ三代」と記載されたの多色縞のデザイン、とてもサラッとした風合いに仕上がっています。

実はところどころ縞がプツッと切れていて、雨絣になっている箇所もあります。

縮緬生地で鬼しぼというと、嵩高いしぼによって生地がテロンとした風合いになりますが、こちらは”小鬼”のレベルで、ちょうど良い塩梅のサラッと感を演出しています。

生地がシボ立つということは、しわになりにくいということです。更に生地が美しくドレープし、美しい光を放つことからドレッシーなものに仕上がっています。

生地を拡大してみました。

縮緬生地でいう鬼しぼは、緯糸に左撚り2本、右撚り2本を交互に織り込むSS→ZZ→SS の繰り返しでした。

しかしこちらの本塩沢は「SS→甘撚絹糸2本→ZZ→甘撚絹糸2本」の繰り返しです。鬼しぼとネーミングされておきながら、少しセオリーと異なることがわかりました。

もし全て緯糸が強撚糸ならばその生地は完全にタテ物となり、オシャレ着らしい張り感が完全に失われてしまいます。サラッと感を重視した結果、平滑な絹糸を使用しているのでした。

他の本塩沢と比べて風合いの上質さが増している林宗平工房製の本塩沢、一度手にしてみてください。

 


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