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問屋の仕事場から

2021.06.13
塩沢お召の最高峰、180亀甲の本塩沢

サラッとした風合いで単衣着物として人気の本塩沢、反物の幅に180個もの亀甲絣が並ぶ逸品が存在します。

本塩沢は緯糸に強撚糸を使って織り上げられた、生地にシボのあるお召織物です。以前に細かな十字絣が敷き詰められた商品を紹介しましたが、こちらはそれを上回る難しさの亀甲Ver、まさに本塩沢の最高峰と言えるでしょう。

地色が黒の本塩沢で男物にも十分使える一尺五分の反物巾があります。

遠目に見ればボヤッと杢無地のように見えますが、近づいてみると極小の亀甲が確かに並びます。お召織物の本塩沢は表面に凹凸が生まれるため、亀甲の形状もどうしても崩れがちになります。

緯糸に強撚糸を使ったお召し織物は、整理時に反物の巾がギュッと狭くなります。1割ほど縮んでしまいますが、もともとの絣がきれいにあっていないと更に絣がズレてしまいます。

組織を拡大してみると、表面の凸凹がわかります。強撚糸にかけられた撚りが元に戻ろうとテンションがかかり、上下方向に暴れた結果、凹凸を形成、これが独特のシボ感につながっています。

組織の拡大、画像の中には3つの亀甲が並ぶ。

かろうじて亀甲とわかる絣ですが、緯糸方向にギュッと詰まって本来六角形である亀甲絣が長方形のような形状になっています。地色も異なりますが、同様の組織の亀甲絣(綿薩摩)と比較しても細長くなっているのがわかるかと思います。

同じ組織(経絣糸率25%)の綿薩摩の拡大。拡大率は同じ。

こちらの綿薩摩も1尺5分の巾ですが、亀甲の数は160個です。組織が同じなのに、今回の本塩沢は1割程亀甲の数が多いわけです。

一個の亀甲を作るのに必要な経糸の本数は8本、180個だと経糸の数は1440本+反物の耳の部分、実際は1500本を超えてきます。

男物でも対応できる広い幅の本塩沢。

一般的な紬織物ですと経糸の本数は1200本程度(結城紬1280本、大島紬1160本)ですが、この本塩沢はシボ出しによる縮みを考慮、男物でも対応可能な広い幅で作ろうとすれば1500本もの経糸の用意が必要です。そしてその経絣糸すべてに寸分狂いもなく緯絣糸を合わせていく根気がなければこの商品は成り立たないのです。

経糸の数が増えれば作業工数は増大する。画像はイメージ。

本塩沢の最高傑作ともいえる180亀甲、手に取ってみれば亀甲の細かさ以上にその風合いの良さに驚かれることでしょう。結城紬や大島紬もなしえない独自の風合い、着物通をうならせる逸品に仕上がっています。

 

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