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問屋の仕事場から

2021.04.09
表現力豊かなモノクロームの小千谷紬

緯絣糸で柄を表現する小千谷紬、白黒の美しいモノトーンの商品も存在します。

小千谷紬は木羽定規(こばじょうぎ)と呼ばれる、予め柄が描かれた板の側面を使い、その柄を糸に転写(刷り込み捺染)することで緯絣糸を作り、柄を織り出しています。

木羽定規の柄を転写した絣糸。任意の色をさっと刷り込むことができる。

糸を括って防染して一色の染料に漬け込むのと異なり、刷り込みはその都度好きな複数の色を転写することができます。結城紬や大島紬ではモノトーンの柄が多いのに比べ、小千谷紬においては多色使いのカラフルな柄がたくさん商品化されています。

モノトーンの大島紬(菊花柄)、絣の締め具合の強弱や配列で奥行きを作り出す。

多彩なカラーが魅力の小千谷紬ですが、モノトーンの商品も作られています。

例えばこちらの月見うさぎの柄、ワンポイントのみのシンプル柄ですが根強い人気があり、ロングセラー商品として毎年作られています。

伝統的工芸品の技法で作られた商品には、伝統マークが付与される

耳と月の拡大。月の縁の部分がギザギザにならずに曲線を描いているのがミソ。

単彩柄の小千谷紬でも目を引くのがこちらの商品、非常に大きなダリア(菊)の模様が生地全面に表現されたものです。菊の花弁のコントラストをうまく表現するには工夫が必要です。

この商品のポイントは花弁の輪部を黒ではなく白を使って表現したところです。白の濃淡で表現することでコントラストが強くなりすぎず、上品な柄に仕上げることができます。実際の花の輪部にも黒は存在しませんので、現物をより忠実に再現していると言えます。

美しい白のダリア、輪郭に黒は存在しない。

花弁の輪郭を真っ白で縁取ろうとすると、先の大島紬の柄のように経絣糸、緯絣糸の白い部分の交点を使って「白の面」を作ることができます。しかし緯絣のみで柄を作る小千谷紬はこの芸当ができません。

どのようにして白場を作り出しているのでしょうか。

地あきの部分(無地場)を見てみると黒ではなく、墨黒のようなグレーであることがわかります。

感の良い方はお分かりかと思いますが、経糸は全て白糸で構成されています。白い経糸と白く防染された絣糸が交差させることで白い面を作り出しているのです。

経糸は全て白、緯絣の白と交わったところが白面になる。

花弁の縁をハイライトで表現した綺麗な柄ですが、きっちりとした絣作り、正確な絣あわせをしないとボヤけたどこか眠い柄になってしまいます。緯絣のみで最大の表現力を発揮した大変秀逸な商品と言えるでしょう。

ところでこの柄、菊より河豚のテッサ(刺し身)に見えてくるのは気のせいでしょうか。。。

単彩の小千谷紬を見かけたらその柄に注目してみてください。緯絣のみで美しく表現された柄にはひと工夫されているはずです。多彩な色使いは帯や小物任せにしてモノクロームの小千谷紬を楽しんでみてはいかがでしょう。

 

 

 

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