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問屋の仕事場から

2020.07.09
単なる民芸品ではない緯絣の薩摩木綿

大島紬の技術を綿織物に活かした薩摩木綿、綿薩摩とも呼ばれるそれは着心地の良さ、希少性もあいまって着物通の憧れとなっています。

綿織物の極みとも言える薩摩木綿は現在では東郷織物さん(鹿児島ではなく宮城県の都城市)一軒で製造されるのみとなってしまいました。

絹糸と綿糸の特性はかなり異なりますので、大島紬の製法を水平展開すれば簡単に作れるといったものではありません。細番手のエジプト綿を使用した綿薩摩は、絹織物とは違う肌あたりの良さから大島紬以上に体に馴染んでくれます。

藍染の細かな十字絣の逸品、絹織物の大島紬より高価である。

経緯の絣を一つづ合わせていく十字絣や亀甲絣の商品は大変高度な製織技術が必要で、流通量の極めて少ない状況です。機械製織した無地や縞の商品展開もありますが、武者小路実篤に誠実無比と称されただけにやはり絣モノが本筋と言えるでしょう。

経緯絣の商品は製造数が限られていて価格も張るものですが、緯絣の商品であれば現実的な選択肢となるかもしれません。

 

冒頭の写真の綿薩摩、濃い地の雨絣に見えるデザインの商品です。

普通、雨絣は経糸に絣付けをして作られますが、こちらは緯絣糸を複数重ねることでポツ(小絣)を作り出しています。経絣で作れば絣合せは不要になるので製織時の手間を格段に省くことができますが、あえて緯絣で演出することは並大抵ではありません。

よく見ると異なる大きさの絣糸を組み合わせて、形状が雨一筋ごとにそれぞれ違うことがわかります。

地糸の色も多色使いで、絶妙な縞割でオシャレなストライプからもデザインのこだわりが見てとれます。

小絣の中には小さい四角「口」「日」もあり、一つ一つの微妙な絣ズレも着る人を楽しませてくれるものです。

「口」の箇所の組織を拡大して見てみました。

10本の緯絣糸が並び「口」を作り出していることがわかります。他の小絣についても同じように連続する緯絣糸を並べて作られていて、製織には大変な手間がかかっています。久留米絣に代表される綿の絣織物は他にもありますが、緻密さやデザインセンスもあいまって正に工芸織物と言えるものに仕上がっています。

かつては日本各地に綿の絣織物がありましたが、民芸品の域を出ず、価格競争力に劣ったことから殆どが廃れてしまいました。工芸品にまで昇華した綿薩摩はこれからも着物好きの憧れとして生き残っていくことでしょう。緯絣と言えばどうしても廉価品のイメージが先行しますが、コストダウンを優先させることなく実現したデザインの妙が光る逸品に仕上がっているのです。

ヨコソですね、と安物扱いせず(十分な高級品ですが)に、今一度その「誠実無比」を見直してみてください。

 

こちらは正藍染の逸品、同様に緯絣合わせが大変な商品である。

布

ストライプと緯絣の組み合わせ、ボヤッと浮かぶ絣もデザインの妙。

 

 

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