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問屋の仕事場から

2019.07.19
無地の結城紬は地機織を選ぶべき理由

反物の側面

紬の王様である結城紬、基本ともいえる無地は大半が高機で織られています。高機で織ることで効率が上がり、大きなコストダウンにつながりますが思わぬ落とし穴もひそんでいます。

地機で織られた商品と高機で織られた商品を区別するため、張り付けられている証紙において明確な違いが設けられています。地機織の商品はくすんだ緑色の証紙、高機織の商品には茶色の証紙が貼られています。

生地に張られた証紙

伝統的ないざり機で織られた商品に張り付けられる証紙、「地機」と明確に記載されている。

経糸が固定されていない地機は、製織者が腰を使って張力を調整、大きな杼で強く打ち込む必要があります。人機一体となって織られた結城紬は地風に独特の味が加わり素晴らしい風合いになります。一方で大変な手間がかかることから高機に比べて織り進めるのに3倍の時間を要してしまいます。生地のコストもそれがダイレクトに反映され、場合によっては倍近い価格の開きがあります。

地機で織られる無地の結城紬。

廣田紬では創業当時から一貫して地機にこだわっており、無地や縞でも地機の商品で統一(男物の杢無地は除く)してきました。せっかくの結城紬をコストを優先して中途半場な状態で仕上げてしまうのはもったいないと思いからです。今でも産地で作られる無地結城紬の地機織の相当数が廣田紬扱いのこだわりの商品になっています。

 

高機の結城紬にひそむ落とし穴

地機と高機の風合いの差は、糸の条件が同じであればわずかなものですのでコストを優先したい場合は高機の商品を選ぶのもアリかもしれません。しかし「糸の条件が同じ」であるというところがポイントです。

気の遠くなるような時間をかけて作られる結城紬の手紬糸ですが、その品質もまちまちです。伝統的に内職である糸取ですが、糸取をする人は減り続けて危機的な状況にあります。最盛期は8千人近くいた作業者も今では300人ほど、高齢化もあり今後も加速度的に減っていくことが予見されています。糸取職人を増やそうと産地も行政を巻き込み人員確保に躍起になっていますが、解決策は簡単には見つかりません。

糸取の様子

キャリア数十年の熟達の取り手、みるみるうちに「オボケ」に糸がたまっていく。

数千人という沢山の作業者がいた頃は、まとまった量のよい糸を安定的に確保することができました。「良い糸」とは節が少なく均質な細さが維持されている糸のことで、織り上げた時の表面のガサつきや風合いに大きな影響がでます。そして良い結城紬とは節の少ないさらっとした風合いの生地のことを指します。「紬はざっくりとした節があってこそ」という意見もあるかもしれませんが、その節を人の手で可能な限り取り除いたうえで、丁寧に美しく織られたのが現代の最高級織物である結城紬なのです。

グレイの生地表面

既に野良着ではない結城紬、良質な糸が使われた地機織の無地。

現在のように糸の作り手が減ってくるとどうなるか、まとまった数の良質な糸を確保することが難しくなります。さすがに着尺に適さない糸は帯や小物などに回されますが、未熟な研修生が採った糸、高齢化により作業効率が落ちた糸(均質でないことも)、果ては海外産の出生が危ぶまれる怪しい糸が氾濫することになります。

手間をかけて作られた手紬糸には間違いありませんが、それらの良質とは言えない糸がどのような商品に使われるかといえば・・・コストダウンを最優先する高機の商品にあてがわれる理屈が成り立つわけです。

手紬糸、地機で織ることが重要無形文化財技法の条件である。

高機の商品すべてを否定するわけではありませんが、価格なりの品質に落ち着いている商品が散見されます。もちろん厳しい産地の検査を経た商品ですので最低限の品質は満たしているわけですが、結城紬の証紙が貼ってあれば、すべて品質が同じではないことを覚えておいてください。

目視でも十分判別できるのですが、一度その表面を表面を撫でてみてください。結城紬は流通段階では糊を落としておらず、表面に硬質感が残っていますがそれでもその差は伝わってきます。

廣田紬誂えの地機の無地、良質の糸を選んで作られる。

コストダウンを最優先に作られる結城紬の高機の無地、格安だからといって安易に飛びつくのは早計、しっかりと生地の質を見極めるのが大切です。地機の無地自体が世の中になかなか無く、比較検討ができないかもしれません。廣田紬扱いの無地の結城紬はすべてが地機織ですので、是非一度その差をお確かめ下さい。

無地の生地見本を利用して作った財布(ノベルティ)から