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問屋の仕事場から

2019.03.13
王家のプライドを纏う首里道屯織の帯

首里道屯織は王家や士族階級の織物だけあって、数ある浮き織の中でも格別気品のある仕上りになっています。

首里道頓織はロートン織とも呼ばれ、裏表両面ともに経浮織となっていることから両面使いをすることが可能です。昔は男性向けの官衣に使われていましたが、現在では和装向けの帯への展開が主流になりました。経糸を浮かして立体感を演出したいわゆる「間道織り」の一種になり、その独自のデザインと配色からは単なる浮き織ではないプライドが伝わってきます。

経糸が浮いて立体感のある段をつくる「経間道」となっていることがわかる。

冒頭写真の商品は首里道屯の九寸帯、多色使いながらも琉球の織物らしい鮮烈さはなく落ち着いた印象です。国の重要無形文化財「首里の織物」保持者(人間国宝)の宮平初子さんの長男である宮平一夫さん、縞割りともいえる配色にはこだわりの哲学が見て取れます。使われている色は地色も入れるとなんと10色! 同じ系統の色でもわざわざ手間を惜しまず、2種類に染め分けていらっしゃいます。そしてこれらを最適に配置するデザインセンスは何十年も道屯織を作り続けてきた宮平さんならではです。

10色もの多色使いながら「うるささ」を一切感じさせない上品なデザイン。

織物は段取り、整経までの過程が一番大変なのに、試し織りをして気に入らなければもう一度最初からやり直すこともあるといいます。宮平一夫さんの作品からは妥協を一切許さない強いプライドが伝わってきます。

 

かわってこちらは祝嶺恭子さんによる道屯織の帯。

シンプルな配色ですが、浮き織のピッチに変化をつけることで立体感が増しています。

沖縄県立芸術大学名誉教授でもある祝嶺さんは、学術的な立場からも琉球王府時代の織物を調査されています。戦災を免れた琉球の織物を調査するために海外(ドイツ)へ渡られ、組織や染織をリバースエンジニアリングできる状態まで分析、図案化するほどの成果をあげられました。琉球の織物の研究で多大な功績を残された祝嶺さんですが、染織家としても国画会での活躍はもとより数々の賞を受賞されています。研究から得られた見識と鋭い感性が作品作りにも生かされているのです。

 

浮き織のピッチに変化をつけることで立体感が増している。

 

2つの異なる染織家の首里道屯織を見てきましたが、デザイン、質感ともに単なる浮き織ではないことがお分かりいただけたかと思います。経糸を浮かしたデザイン、経間道の技法自体は自動織機でも簡単に作ることができるもので、現に西陣などで様々な種類が作られています。それらは10分の一以下のコストで大量に作ることができますが、どうも味気が感じられないものです。

 

王族、士族しか着用を許されなかった首里道屯織、貴いプライドがしっかりと商品作りにも反映されたそれは、単なるオシャレ帯ではありません。普段使いにはない、とっておきの逸品として活躍してくれることでしょう。