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問屋の仕事場から

2018.06.07
下井紬の花織着尺

ピンク色の紬着尺

下井伸彦氏が織りなす下井紬、都会に映えるモダンテイストなデザインで注目を集めています。そんな下井紬に花織を取り入れた商品が織り上がってきたので紹介します。

花織は糸を複数本飛ばして浮かせる紋織りの技法で、単純な平織とは異なる複雑な動作が求められます。帯などは腹と太鼓だけに花織柄を持ってこれば良いのに対し、着尺では織り始めから終わりまで柄が続きますので、最後まで気を抜くことができません。

下井紬の帯では変化織で柄を作りますが、着尺にもあしらうことで粋なアクセントになります。

浮き糸が浮いている生地

下井さんのことを綜絖の鬼とも呼ぶ人もいるほどです。

花織は7寸ほどのピッチで配置されており、目立ちにくい控えめなもの。全面花織で仕上げることもできなくはないのですが、あくまでもベースは紬糸を使用した多色使いの平織の織物です。琉球の織物のように全面に花織をあしらうと、浮糸が多くなりそこからほつれが生じます。長く使ってもらえる実用的な紬織物として糸が渡る間隔も最小限に抑える設計思想です。

そしてこのタイプの花織は表面は緯糸が浮き裏面は経糸が浮きます。裏に糸の通らない両面浮花織で、単衣にも仕立てることが可能です。

3巾分を並べた様子、横段がすべて一定のピッチで繋がる。経糸には絣糸を使用。

使われている自然染料は茜、ススキ、タマネギ、梅、そして色褪せ防止のため少量の化学染料が加えられています。経糸に絣糸を使っており、雨絣に見えます。

紬糸を使った確かな風合い。

 

続いて別のテイストの商品も紹介します。

花織といえば、可愛く華やかなイメージがありますが、こちらはそんなイメージを覆す大市松(6:4)に織り上げたライトグレーの紬です。

大市松の下井紬

琉球の織物に見られる花織とはちがったパターンの紋織りがあしらわれています。紬糸の節に見え隠れするほどの控えめな存在感が粋なアクセントとなっています。

男性が着てもおしゃれなデザインで(男性こそに勧めたい)、奇を衒いすぎないところがポイントです。

 

そしてこちらがトルコブルーの紬、横段の淡いボカシになっています。

植物染料にヘマチン、梅、ススキを使い、化学染料で色止めをしたものです。

ブルーかすみの下井紬

こちらもきちんと左右の段が合うように織られています。

紬といえば野暮ったいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、下井紬は都会で活躍してくれるモダンなデザインに仕上がっています。

以上、花織をあしらった希少な下井紬の紹介でした。

 

 

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