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- ブログ -
問屋の仕事場から

2024.05.05
一時ブームだったヒゲ紬、今や希少品に

ある販売店様から「市場にヒゲ紬がないので探してほしい」という依頼があり、その案件は無事に納めることができました。しかし探してみるとないもので、いつの間にか見つけるのが困難なくらいに姿を消してしまっています。

「ヒゲ紬」でネット検索で探してみると中古品ばかりがヒットして、新品で販売している先が見つからないのです。

以前のブログでヒゲ紬の白生地を紹介でその概要について触れていますが、ヒゲ紬は緯糸に網糸を織り込んだ紬のことです。所かしこからヒゲのように糸が飛び出して見えるのでヒゲ紬と呼ばれています。

ヒゲ紬は漁網(昔は絹が使われてた)を切ったものを織り込んでいたことにルーツがありますので網糸紬などの呼称があります。現在はわざわざ漁網から作ることはせずに網糸を別で専用に作成して、ヒゲ紬が作られるようになりました。

このふわふわっとしたヒゲがアクセントとなってその昔は男性向けの羽織としてブームになりました。そのうち女性向けの配色も作られるようになり、様々な産地で作られるようになりました。

今回紹介の商品は滋賀県の秦荘紬ブランドのヒゲ紬です。

ヒゲの長さは控えめですが、少し出ているくらいがアクセントとしてはいい気がします。経糸は平滑な絹糸、緯糸に紬糸が使われているタイプの平紬に数本に一本の比率でヒゲ糸が織り込まれています。

ヒゲ糸の混率が高ければもっとヒゲが目立ちますが、コストとの兼ね合いもありますので適度な量かと思います。

男性向けに作られていることもあり、幅が1尺5分以上あります。実はアンサンブル(羽織+長着)として使ってもらうために共色の別の紬が用意されています。基本的にヒゲ紬は羽織で使われることが多いです。

ヒゲ紬(上)と共色の紬生地(下)

生地の拡大、ヒゲの部分が飛び出ている。

今でも需要があるかと思うヒゲ紬ですが、市場から静かに姿を消しつつあります。コストのかかる網糸の製造を始め、ある程度のロットで製造が必要という事情は致し方ない理由でしょう。

現状は在庫限りとなりますが、今後も時期を見て生産していきたいものです。

実はヒゲ紬の生産が全盛期だった頃、洋装向けの生地も織られていました。

こちらは廣田紬の玄関でのご婦人のワンショット、網糸がたっぷりのヒゲ紬コートをお召しでした。

服地向けの広幅で作られていて明るめのパステルカラーの生地になっています。当然今はこのような特別な生地は作られていませんが、反物が残っていたらとても楽しい服を作ることができそうです。

一時はブームとなったヒゲ紬、ノスタルジーとなってしまわないように今後も情報発信していきたいと思います。

 

 

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