紬の代表格である大島紬、生産量推移を見ながら大島紬の今後につ…
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問屋の仕事場から
- 2021.11.02
- 奄美大島が世界遺産に、本場奄美大島紬組合結成120周年
今年2021年は奄美大島が世界自然遺産に登録され、奄美大島紬の組合結成から120周年となります。廣田紬は奄美市内のホテルで催され組合の記念式典に参加してきました。
廣田紬においては大島紬を奄美が米軍の施政下に置かれていた頃から取り扱ってきました。役員でもあった図案師が斬新なデザインを次々に考案、何万反とオリジナル商品を製造をしてきました。祖業である結城紬とともにまさに看板商品です。
戦争で一旦はゼロとなりましたが、奄美が本土復帰した1953年の生産数は38,155反、1968年〜1986年までは20万反を超える生産が続きます。島民の大半が何らかの形で大島紬の製造に従事、当時はまさに島の経済の屋台骨となる一大産業だったのです。
平成に入り生産は急減、昨年2020年の生産数は3,385反と全盛期の1%台、、、大変寂しいものですが、他の産地と比べればまだまだ「産業」としての性格を残しています。
今年の生産数も数パーセント落ち込んでいますが、丹後や西陣などの産地では生産数が40%ダウン、コロナ禍でこの数字は大変健闘していると言えます。
120周年式典の翌日には各商社による商品の選品会が行われ、各社意欲的に仕入れに動き、素晴らしい商況とのことでした。
来年1月には京都にて、奄美・鹿児島、両組合による合同販売会も催されることが決定しており、勢いに乗っている印象を受けました。
大島紬はかつてのように島の経済を支えるという状況ではありませんが、今も島のアイデンティティーとして生きています。
今回の式典はコロナ禍ということで当初予定されていたパーティー形式が中止となりました。感染防止対策を徹底してコンパクトに行われたにもかかわらず、地元新聞の翌日朝刊の一面トップ記事になりました。読者の大半がかつては大島紬に従事していたことを考えると、トップニュースなのです。
こちらは奄美一のディスカウントストアの衣料品売り場、生地自体は綿や化学繊維なのですが、どこか大島紬ルックのデザインの服がたくさん並んでいました。着物でなくても大島紬のデザイン自体が地元の人に支持されている証しといえます。
大島紬は島の風土から生まれた独自の柄、自然を生かした染色技法、高度な製織技法に支えられた世界一精緻な絣、着物だけに使われるのはもったいないポテンシャルを秘めています。若い作り手の育成、適正な価格の浸透など課題は多いですが、今回の120周年式典では組合青年部を中心としてが意欲的に活動するなど、次世代のリーダーが存在感を増しているのが印象的でした。
奄美大島が世界自然遺産に登録され、コロナ禍が終われば国内外からたくさんの観光客がやってきます。奄美はマングローブなどの自然遺産だけでなく、大島紬という最高の文化をアピールする絶好の機会です。
ありがちなネイチャーツアーだけではなく、大島紬の製造工程を活かした観光コースを開拓することで、満足度がUPすることは間違いありません。
地球印の本場「奄美」大島紬のデザインは、地球全体に大島紬を広げるという志のもとに生まれました。世界遺産登録は大島紬の素晴らしさを世界に広げるまたとないチャンスです。自然の恵みを活かした唯一無二のプロダクト、SDGsといった時流にものり商機が熟している今、大島紬という文化をどのように活かすか、大きな注目が集まっています。