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問屋の仕事場から
- 2021.10.25
- 高機の結城紬の3つの特徴とは
結城紬には地機(じばた)で織られた商品と、高機(たかはた)でおられた商品が存在します。オリジナルの地機を効率化したのが高機ですが、どのような特徴があるのか解説します。
※本ブログでは結城紬は全て本場結城紬の略称となります。
結城紬は本来すべて地機(いざり機や腰機とも)で織られていました。
図にあるように経糸が整形されたチキリを機に固定して、腰を使って経糸のテンションを調整、緯糸を打ち込んでいくシンプルな織機です。特殊なものではなく、日本各地で当たり前のように使われていた方式でした。
明治に入り、常に経糸を固定することのでき、製織工程が劇的に効率化された高機が登場すると、他産地では地機は急速に使われなくなりました。現在では経糸のテンションを強くかけることのできない特殊な織物などで使われるのみです。
結城紬では明治、大正を経ても昔ながらのスタイルを変えずに地機を使い続けますが、戦後いつの間にか高機が出現していました。誰がどのような経緯で導入したのかは不明ですが、地機の商品に混ざって高機の商品が流通してくるようになります。
創業当初から結城紬を扱ってきた廣田紬では結城紬は地機ありきのものであると考えていましたし、高機で作られている代物を見たときは大変な衝撃だったそうです。
現在は反物に貼り付けられている左側の検査証紙を見ればすぐに識別することができます。証紙が剥がれてしまったとしても裏側に高機の○タと押印してありますので消えることはありません。
結城紬(高機)の3つの特徴
高機には地機と比較して3つの特徴がありますのでそれぞれ解説していきます。
①安い
同じ色、柄の地機と比較すると大幅に価格が安くなります。お店によっては2倍以上の開きとなるかもしれません。一昔前は色無地の小売価格298,000円セールという販売企画もあったようで、結城紬をぐっと身近に感じることができる意欲的な値付けがされていました。
安価な理由は3つあります。地機に比べて効率化された高機を使うことで、製織工程にかかる時間が半分以下になります。織物は人件費の塊ですからその分コストが下がるのは自明の理です。
そしてコストダウンを目的に作られた高機の商品は投入される糸質にバラツキがあり、原材料費の点で地機の商品と差が生まれています。そして過去のセール価格がベンチマークとなり、まともな価格がつけにくいという事情も見え隠れします。
②生地に節が目立つ
結城紬に使われる手紬糸は僅かな節を有する無撚糸です。紬は節がポイントですが、結城紬においては節が目立つものは良しとされません。可能な限り節を除いた糸のみを選別、さらに太さの揃った糸を揃えてして織り上げることで上質な生地となります。
しかし糸の良し悪しにこだわっていられない高機タイプの商品は、織り上げた時に節の目立つ生地になります。他産地の紬からすれば節が少ないといえますが、上質な地機の結城紬と比較するとどうしてもガサガサ感が目立ってしまいます。
③絣物が存在しない
高機の結城紬には原則絣柄は存在しません。全て無地、縞、格子のタイプ、つまり絣の入らない商品となります。伝統の地機を使い続けてきた矜持から高機での絣物の製織を認めない、、、判断があったか定かではありませんが、絣を織るのに高機は「禁じ手」とされています。
一方、地機の無地、縞、格子のシンプル柄の商品も少ないながらも存在(廣田紬では無地であっても原則地機で作成してきました)しています。
高機の商品の特徴としてよくあげられるのがその風合いです。
経糸を弛緩することのできない高機と、製織者の都合で調整可能な地機、織り上がりの表情が微妙に異なってきます。地機の方がフワッと感、むっくら感がありますが風合いの定量化、良し悪しの判別は難しいものです。こちらについてはまた機会を設けて検証してみたいと思います。
以上、結城紬の高機と地機を比較した時の特徴でした。
高機の結城紬に対して厳しい意見を記していますが、地機の商品がオーバースペックとも言えるもので、高機の結城紬が数ある紬のうちで最高の紬であることには間違いありません。高機でも他の紬とは全く違う結城紬の素晴らしい風合いは伝わりますし、それが半額以下で購入できるのであれば最高にリーズナブルと言えるのです。