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問屋の仕事場から

2020.06.05
優しい肌触りの冷感麻襦袢(コンニャク糊加工)

麻織物で有名な近江産地、夏向けの麻襦袢も様々な種類が作られています。その中でも抜群に気持ちのよい肌触り、コンニャク糊加工の麻襦袢を紹介します。

温暖化により夏日が増える昨今、出来るだけ涼しく過ごしたいというニーズから様々な冷感素材を使った襦袢が登場しています。多くはポリエステルなどの化学繊維を使ったものですが、様々な問題から天然繊維以外は受け付けない人も多くいます。

そこで吸湿性、速乾性に優れた麻がベストな選択肢なのですが、独自のシャリ感、チクチク感を嫌って「麻はちょっと」という方が多いのも事実です。

粗野な麻糸、漂白することで手前のように白くなる。

写真は極めてプリミティヴ(原始的)な麻糸です。こちらを使って織ればとても味のある生地にはなりますが、麻独自の硬質感が全面に出て裃のようなハリ感のある生地になってしまいます。座布団生地や暖簾などには最高の生地ですが、着るものとして適しているかといえば必ずしもそうではありません。

ランダムに節のある味わいのある生地。

そこでより繊細な糸を使うことで、肌あたりを柔らかくしたのが越後上布や高宮布(近江上布)でしたが、コストの観点からすると現実的ではありません。

現在では均一に細く紡績された麻糸が使われ、昔のような麻の硬質感はだいぶマシになったと言えるでしょう。

 

コンニャク糊をコーティングした襦袢

低コストで繊細な織物を作れるようになった現代ですが、麻のチクチク感はどうしても残ってしまいます。

そこでコンニャク糊を糸にコーティング(サイジング)することで、肌への当たりを劇的に改善したのが本商品です。

糸の毛羽立ちを薬品で処理することでシルキータッチを実現する加工もありますが、こちらは食品にも使われているコンニャク(サトイモの仲間)を使っていることがポイントです。コンニャク粒子は天然繊維である苧麻(ラミー)との相性も良く、光沢がよりいっそう増して高級感が出てきます。

※コンニャク粒子は水には不溶性のため家庭で洗うことができます。

 

組織を拡大してみました。

ほとんど繊維が解けることなく、毛羽立ちも抑えられていることがわかります。実際に触ると生コンニャクの触感とは言わないまでも、麻のチクチク感がなくシットリ方向に振られいることが明確にわかります。

そして驚くことに涼しさの値を示すQmax値(生地が肌の熱を奪う量)は接触冷感を全面にうたった素材、アイスコットン襦袢の1.5倍という数字を叩き出しています。これはポリエステルなどの化学繊維の接触冷感レベルと遜色ないもので、天然繊維の生地では随一と言えるでしょう。

カラバリは4種類、写真の手前からグレー、ブルーグレー、ベージュ、白

酷暑とも言える日本の夏、ポリエステルの襦袢も扱いが楽ですが、自然素材からできた肌に優しい商品が存在することを知っていただければと思います。

 

 

 

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