結城紬全体の数パーセントしか作られなくなった結城紬の縮織り(…
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問屋の仕事場から
- 2017.09.02
- 粋の極み、男物の本場結城紬
男性の着物は同じような色柄が多く、その質感で大きな差がつきます。
様々な男物がありますが、着物を着なれてくると結局は紬の最高峰である本場結城紬に落ち着くものです。せっかくの結城紬ですから素の無地ではなく、少々趣向を凝らしたものを選びたいところ。今回は男物向けに作られた結城紬の紹介です。
※廣田紬では本場結城紬のみを取り扱っております。以下、結城紬は本場結城紬とご理解ください。
江戸の町で結城紬が人気を博した頃、結城紬といえば男物がほとんどでした。現在でこそ様々な絣柄が織られ女性もののイメージが強いのですが、本来は武士や裕福な町人がシンプルな縞柄を着こなしていたようです。
現在の男物の結城紬は広巾で織られており、検査合格証の下に「尺幅以上」というシールが張り付けられています。男性向けに反物の幅が1尺1寸前後と広くとられています。ただでさえ高額な結城の手紬糸を一割増で使うため、男物の結城紬は少々値が張ります。
ちなみにこの広巾の反物、一般の男性向けには十分な幅は確保されているのですが、相当に長身で恰幅の良い方(例えば力士)の場合、2反分が必要となります。着尺と羽織でアンサンブルを作るとなると、なんと4反分もの量が必要になるのです。
男物の結城紬はどのようなバリエーションがあるか商品を見ていきます。
まずは無地(見本帳)から
結城紬の無地は節が少しあるものの、目立たない上品な無地です。これは糸づくりの段階でできるだけ節を取り除いているからです。一つ紋を入れれば略礼装となり、普段着だけではなく使える場面がぐんと広がります。一般的に流通している結城紬の無地は高機で織られたものがほとんどですが、廣田紬では地機にこだわっています。せっかくの結城紬ですから地機で織られたものをお選びください。
続いて格子(見本帳から)
この格子は緯糸に絡み糸(杢糸)を使い、味わいのある小格子模様を演出しています。杢糸は異なる色の2本の糸を絡み合わせて作った糸で、生地の厚みがすこし増すことになります。杢糸を作る職人も少なくなり貴重なものになってしまいました。
続いて縞、
上は6本ごとに茶と黒を組み合わせたもの、下は3本(濃茶)1本(薄茶)の組合せ。様々な縞割が可能ですが2色使いの細縞が定番です。かつて結城紬は縞模様がほとんどであったことから結城紬を扱う産地問屋を縞屋と呼ぶほどでした。
そして結城紬の男物は定番の無地、縞、格子だけにとどまりません。
「ゴケ無地」異なる色の経糸と緯糸の組合せ。明るい色と濃い色を組み合わせるとよく目立ち、極小の小格子ということもできます。
「はけめ」異なる色の経糸を交互に配置することで、まるで刷毛で刷いたような質感を演出することができます。この商品は経糸に薄青と濃ベージュが一本づつ配列されている。
結城縮、縮結城と呼ばれるもので、緯糸に強い撚りをかけサラリとした感触の単衣向きの結城紬です。昔は結城紬といえばこの縮織が主流でしたが、現在はほとんど織られることがなくなってしまいました。男物に使える結城縮はさらに珍しく、大変貴重なものです。
そして最高級品が絣糸を使った総詰柄となります。男物はこのような手間のかかる商品がほとんど作られていないのが現状で、過去の見本帳からの紹介です。
過去には160亀甲の男物も多数作成していましたが現在では製造が困難となっています。
また、男性物でも180㎝以上の高身の方や、体格差によっては通常の男物の巾では足りないこともあります。そういった場合は規格外の1尺1寸以上の反物巾が必要になりますが、別誂えによって超広巾のものを作ることも可能です。巾の広さは筬巾の規格次第、果ては織機の構造次第になりますが一度お問い合わせください。
なお、力士など規格外の体格の方であれば2反分をつないで作らざるを得ないこともあります。
以上、ざっとですが男物の結城紬のバリエーションを紹介をしてきました。
定番は無地、縞、格子ですが、地味になりがちな男物の中でも様々な趣向を凝らした品物があります。廣田紬では別誂えが可能ですので、納期は要しますがお客様がこだわり抜いた特注品を作り上げることもできます。過去数十年にわたる膨大な見本帳がございますので是非ともご相談ください。