最高級織物の一つである喜如嘉の芭蕉布、伝統柄の絣や花織をあし…
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問屋の仕事場から
- 2019.12.20
- 芭蕉布に琉球紅型を施す贅
沖縄の染色文化を代表する「琉球びんがた」、和装用途では絹の帯生地に加工されることが多いのですが、顔料を使う紅型は染料が浸透しにくい様々な自然布に施すことも可能です。沖縄を代表する自然布、喜如嘉の芭蕉布(重要無形文化財)と重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された玉那覇有公氏の紅型、なんとも贅沢な組み合わせの紹介します。
芭蕉布は先染めの絣柄と浮き織で模様を表現しますが、廣田紬では特別に喜如嘉の芭蕉布の白生地を誂えています。芭蕉布の良さが伝わるそのままの無地帯としても使えますが、紅型を施すことで格別のオシャレ帯に生まれ変わります。
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特別に誂える芭蕉布の無地生地、九寸帯(左)と地厚の八寸帯(右)。
大変貴重な芭蕉布の生地、軽々しく扱うことはできません。そこで琉球紅型の重要無形文化財保持者である玉那覇有公氏の工房へ加工を依頼、重文×重文の実に贅沢な唯一無二のコラボレーションとなります。
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玉那覇さんの工房、焼失した首里城からほど近い丘にある。
琉球びんがたは生地に伸子をピンと張り、防染したい箇所を糊でマスクして色を差していきます。
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伸子が貼られた生地(絹)、作業面を極力フラットにするため強いテンションが加わる。
今回加工した9寸帯は生地が薄く、着尺のように細い糸が使われています。芭蕉布の生地は乾燥に弱く、何も考えずに伸子張りをすれば「パンッ」と端が裂けてしまいます。生地としては最高レベルに高価な生地を扱うには胆力と経験が必要になります。沖縄は年間を通じて湿潤な気候ですが、梅雨に入る5月から7月の時期(平均湿度80%超!)に作業が行われます。
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芭蕉布に残る伸子の跡、絹の生地のように外側ギリギリには刺すことができない。
慎重に慎重を重ね、各色の顔料を芭蕉布に差していきます。絹の白生地の場合、染料による地染がおこなわれますが芭蕉布は生地の生成り色が地色です。
琉球びんがたに使われる顔料は自然布といった染料の「くい」が悪い素材も染めることができます。色を載せるといった表現が正しいかもしれません。紅型は暖色系から寒色系の順に色を差していくので、この商品の場合は赤、茶、黄、緑、青、藍、紫の順に色が入れられます。
二種類の色が絡み合う箇所、組織を拡大してみてみます。
透明感のある芭蕉の糸に2種類の色が載り、顔料の残りカスが付着しているのがわかります。
これが通常の絹の商品だと顔料の残りカスは付着していません。扱いにくいであろう芭蕉布に染める苦労がしのばれます。
大変魅力的な芭蕉布の紅型帯、これ以上贅沢な夏帯はありません。きもの通の 「あがり」 として存在している贅沢品といえるでしょう。
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八寸帯、地厚の生地がつかわれている。
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藍型(えーがた)、淡彩だと芭蕉布の地色がより映える。