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問屋の仕事場から

2017.08.17
日本茜を使った希少な純草木染紬

草木染紬の証紙

100%草木を使い、染められる松本夫妻の順草木染紬。南魚沼の自然の恵みが大変な手間をかけて作品に還元されています。

今回は製作期間がなんと5年!!日本茜を使った小格子の着尺の紹介です。

草木染というと、地元の草木を採集したものを、職人がこだわりの製法で染め上げていると思われがちです。しかし実際は植物染料自体を購入して染め上げているケースもあり、個人でも染料屋さんから簡単に購入することができます。

この場合、手作りのイメージからはほど遠く、工業的に濃縮液体化されたものでも天然成分由来には違いありませんが、すこし拍子抜けしてしまいます。草木染であることにこだわる場合、その染料がどのような経緯で使われているのか、一考してみてもよいのではないでしょうか。

紬の反物

今回紹介の商品は自然に自生する日本茜を使ったものです。冒頭で制作期間5年と記しましたが、これは染料の元となる日本茜を採集するのに5年以上要したからです。

数千種類に及ぶ茜科の植物は世界でも古くから利用されてきた染色材料の一つです。その赤色の根からは赤色染料を取ることができます。同じ品種でも土壌、気候等により様々な種類の赤が抽出されてきました。現在では染色材料として使う場合、主に中国、インド、西洋アカネが使われています。

日本のアカネが使われなくなった理由、それは染色するための量を採ることがとても困難だからです。自生する数自体が少なく、染色に適した成長したアカネを掘りあてるのは至難の業、一日探しても数株しか見つかりません。さらに採れた株も西洋アカネに比べ根が細く、染料として使えるようになるにはまとまった数が必要です。

 

5年間にわたる赤根採集の結果、ようやく一反分に使える量が集まったのです。次に日本茜を使った作品が出来上がるのはいつになるかわかりません。正直このような作り方をしていては生業としてとても成り立ちません・・・

紬の反物ここまでして自分で採集する地元の植物染料こだわる理由、それは自然の恵みから尊い命をいただくという、松本夫妻の染織哲学に他なりません。なんせ媒染材に使う藁灰まで自分で耕した田んぼ(当然無農薬)の藁を使う徹底ぶりです。精魂込めて作られた品物は必ずストーリーが伴っていますが、反物に貼られた一枚の証紙からはなかなか伝えることが難しいものです。

赤い糸束

茜で染められた紬糸、落ち着きのある優しい色合いである。

松本夫妻の作品はその風合いも格別で、これぞ紬のお手本というのが手に取ると同時にすぐに伝わってきます。一切の妥協を許さないこだわりぬいた松本夫妻の純草木染紬、是非一度手に取って他の草木染紬と比べてみてください。写真や文章では伝えきれない素晴らしさが間違いなく伝わってくるはずです。

クシャッとした紬

丁寧に手機でしっかりと織られたその風合いは、紬好きの方ならすぐにわかる極上のものです。

駅の外観

電車が2,3時間に一本しか通らない自然豊かな場所に松本さんの工房はあります。日本一の豪雪地帯の自然のめぐみが商品にづくりにつながっています。

 

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