最高のブランド力を持つ結城紬ですが、それを扱った書籍について…
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問屋の仕事場から
- 2019.07.25
- 着物、紬を買い取りに出す前に
近年、使わなくなった着物をどうすれば良いかという悩みが増えています。
一般の消費者様から、故人の古い結城紬が出てきて、どういったものか鑑定してもらいたいという問い合わせをいただきました。送られてきた画像を確認すると男物の本場結城紬の亀甲の詰め柄、そこそこの自動車が買えてしまうくらいの価格の代物です。さらに仕立て上がりではなく、ハサミが入っていない反物の状態、糊抜きもされていて生地の劣化も最小限に抑えられていると推察されました。
その方が古物買取業者に電話で見積もりを依頼したところ、とりあえず3千円との返答があったとのことでした。腐っても結城紬、中古市場でも相当な価格がついており、現在では作ることのできない技術が使われているものもあります。絹織物は寿命がありますからその価値は減価していきますが、3千円はあまりにもひどい回答です。強引に不当な価格で買い上げる 「押し買い」で着物買取業者が行政処分を受け社会問題化していますし、十分気をつけなければいけません。
着ることがなくなった着物、各家庭に眠るタンス在庫は相当なもので、需要の数十年分といわれています。本人が亡くなったのを機に遺族が買取依頼をするというケースが多く、着物の需要が全盛期であった昭和30年~40年に購入した人が多死の時代を迎えた今、買取業者が跋扈することになりました。
桐ダンスいっぱいにしまわれた着物、帯、現代を生きる人にとって必ずしも必要なものではありません。それらは故人にとっては愛着があったものでも、遺族にとってはただただ厄介なもの、洋服のようにおいそれと捨てるわけにはいかず、お金に変えてくれる人がいればどんなに素晴らしいことでしょう。
残念なことに数十万円した高価な着物や帯に、納得のいく買取値段が付くことはありません。仕立て替えのコスト、シミやヤケ、虫食いといったダメージ、生地の経年劣化、デザインの陳腐化がその主な原因です。あんなに高価な買い物だったのに二束三文で査定されるのは心苦しいことでしょう。
しかし保存状態の良い反物の状態で出てきた場合は話が別です。
特に紬は数十年変わらぬデザインから現在でも十分通用するデザインのため、古いものでも高い相場が維持されています。さらに先染め織物はヤケなどに強いことから、新品同様の状態を保っていることがあります。たとえは購入価格100万円の振袖には雀の涙ほどの値段しか付かない可能性がありますが、購入価格100万円の結城紬は数万円~といった値段がしっかりと付くのです。
紬は柄さえ普遍的なデザインであれば相場が醸成されていますので、買い取った時点で利益が確定、在庫リスクの少ない商売といえます。どれだけ安く買い取ることができるかが業者の腕の見せ所、着物の相場観、知識など持ち合わせていない遺族はよいカモにされることもあるでしょう。これらの業者は行先を失った着物、帯を二次流通させる点において大きな役割を果たしていますが、従来の呉服屋さんからしたら、少々首をかしげたくなるところもあるでしょう。
全ての買取業者が悪質というわけではなく、しっかりと専門知識をもって、妥当な引き取りをしている買取業者もいるはずです。しかし紬を買取業者に売却する前に一呼吸おいてみてください。
古い紬の反物が出てきたら
着物に仕立てることなく、反物で古い紬が見つかることがあります。本人のコレクションであったケースもあるかもしれませんが、大部分が進物用でそのまま保管されていたものです。一昔前は結納返しで未仕立ての反物を納めることが一般的だったことがあります。受け取った人が着物に興味関心がなければ、反物の状態でずっと残ることになるのです。
桐箱に入っていることも多く、保管状態が良ければ絹の劣化の進行も最小限に抑えられているかもしれません。問題があるとすれば、反物の巾が一昔前の日本人の体格に合わせて、狭まめに作られていたくらいでしょうか。そこは小柄な人であれば問題になりませんし、男性向けの巾は現代の女性にぴったりなケースもあります。
そのような新品同様の紬の反物、故人の遺志を継ぎ誰か遺族に着てもらうのが一番です。誰もまわりで着物を着る人がいないケースもありますが、作務衣などに仕立てても構わないのです。
それでも使わないといった場合は他人への譲渡や売却するしかありません。現在はフリマアプリやネットオークションで個人でも簡単に個人間取引ができるようになりました。商品のしっかりとした状態説明、結城紬や黄八丈の証紙など、わかりやすいものがついていればすぐに買い手がつくはずです。
それらがなかなかできない場合は購入した呉服店に持ち込んでみましょう。場合によっては買い戻してもらえますし、委託販売という形でお預けして納得のいく価格で販売してもらえる可能性もあります。販売店がわからない、すでに廃業している場合でも、古物の取り扱いをしているお店か、おしゃれ着物の取り扱いに長けた呉服専門店に問い合わせてみましょう。
昨今の着物買取専門業者に持ち込んでも、結局買取業者の次の販売先はリサイクル着物専門店や古物も取り扱う呉服店になるのですから、少なくとも2倍、場合によっては10倍以上の買取価格が期待できます。少々面倒でも時給1~10万円の仕事と思えばやる気がわいてくるのではないでしょうか。
着物を買取に出す際は、安易に買取業者に頼まず一呼吸置いてみてください。
着物買取専門の業者へ
とにかく遺品の整理を早くしたい、面倒なことは早く片付けて現金化したいという場合、着物買取屋さんは大変便利な存在です。量や質に関係なく出張で査定、買取をしてくれますし、場合によってはごちゃごちゃした和装小物類もまとめて桐ダンスごと持っていってもらえることもあります。遺品の整理はとにかく面倒で時間がかかるもので、売却価格が二束三文であっても、とにかく整理できるだけでありがたい存在です。
仕立てあがった着物はよほどの作家物以外は大した値段になりませんので着物買取屋さんに任せましょう。それらの着物はリサイクル着物として活躍してくれます。場合によっては海外で日の目を見ることになるかもしれません。
反物の状態で未仕立ての場合、特に結城紬などが出てきたときは買取査定員の目の色(電話では声)が変わることでしょう。
越後上布の未仕立ての反物が出てきたのですが、宮古上布の新品が出てきたのですが、、、とダメ元で問い合わせてみてはいかがでしょうか。
参考までに買取業者のリンクを貼っておきます。
どこがオススメ?と思われるかと思いますが、一定の水準でマニュアル化されてる大手業者であれば査定員による当たり外れが少ないでしょう。着物以外の買取も行なっていますし、取引がシステム化されていてスムーズに現金化が進みます。相見積もりを取ることで条件が改善することもありますので、複数の業者に問い合わせてみることをオススメします。
以上、古い着物で紬の反物が出てきたときには一呼吸おいて調べてみてください。本場結城紬などのブランド紬であればしっかりとした値段がつくはずですし、知識がないのをいいことに二束三文で買取されてしまっては故人も浮かばれないことでしょう。
一番よいのは仕立てて(作務衣でも)、使うことです。振袖や留袖とちがって紬は普段着で部屋着としても着ることができます。人生観が変わるほどの力を持つ手仕事で作られた衣服、貴方の生活の質を必ず豊かにしてくれるはずです。