日本最西端の与那国島で作られる与那国花織、孤島という難しい環…
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問屋の仕事場から
- 2018.09.14
- ヤシラミ綿の与那国織
与那国織と言えば浮花織を散らした煌びやかな絹織物をイメージしますが、絹以外の他の自然素材も使って織られています。
国の伝統的工芸品に指定されているのは与那国花織だけではありません。現在の与那国花織は琉球王府への貢納布として作られていたもの現代の和装用途向けに仕上げたものです。地元の人々が着用する与那国ドゥタティは綿で織られていますし、伝統的工芸品の指定要件には絹以外にも綿、麻、芭蕉の使用が認められています。
今回は和装用等にあまり使われることのない希少な綿素材の与那国織の紹介です。
これはクズシ織(網代)の技法で織られた商品ですが、40本崩しという大きなピッチのデザインがとられています。まさにヤスリの目、琉球方言でヤシラミー(与那国は独自言語なので適切ではないかもしれませんが)といえる大胆なデザインです。
コストのことを考えると緯糸を太くする傾向(緯糸の打ち込み回数が減る)がありますが、この商品はそのようなことはありません。見た目のバランスも美しいものになりますし、マジメな作り手の様が伝わってきます。
デザインや技法的にはこれといった特徴のない綿の与那国織ですが、綿織物をマジメに手織りするというところに付加価値があります。織機で安価に大量に作ろうと思えばできないことはありませんが、そうした途端に平坦で味気のないただの布になってしまいまうでしょう。
与那国の熟達の織手がつくった風味あふれる綿布、手に取るとやはり人の手仕事によって作られたものは良いと再発見させられます。絹織物のような煌びやかさはありませんが、こういった布にこそ本当の美しさが宿っています。絹を使った花織だけではない与那国の織物、今後の展開が楽しみです。