前編では流れるような透け感の明石縮を紹介しました。どのように…
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問屋の仕事場から
- 2017.06.27
- 織の名手、菊池洋守氏が織りなす八丈織
織の名手として名高い菊池洋守氏が作る「八丈織」の紹介です。
八丈と名が付きますが、伝統工芸織物の本場黄八丈とは異なり、伝統マークはつきません。菊池さんが追求する色使いのため、島で採れる天然染料に限定して使用するわけにはいかないからです。そのため菊池さんの作品は黄八丈で使われる黄、黒、鳶色以外にも様々な色使いをすることができます。
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在庫希少のため見本布からの紹介、従来の黄八丈にはない色を出すことができる八丈織。
織は黄八丈の特徴である複雑な綾織はもちろん、花織、吉野格子、自らが紡ぎ出す「おやり糸」を使った平織まで様々な織技法で表現されます。
シンプルな色無地でも菊池さんでしか表現できない上質な艶があります。そしてファンが絶賛するその風合いは、作品に対して最後まで妥協をしない菊池さんのプライドから生まれるものです。
個人工房である菊池さんは織るだけではなく、すべての段取りを行わなければなりません、糸繰りや綛揚げ、極めつけは幻の糸である「おやり糸」作りまで行われています。工房には所狭しと年季の入ったさまざまな道具が置かれています。
そして織る際には今となっては珍しい竹筬を使っていらっしゃいます。これも極上の風合いに一役買っているのでしょう。普通の織り手とは違うパラメータが道具にも宿っているのです。
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現在では作られなくなった竹筬、金属製に比べ弾力性があり経糸への摩擦負担が少ない。
八丈島では現在大きく三種類の黄八丈が生産されています。黄八丈織物協同組合を経由する本場黄八丈、黄八丈めゆ工房が生産する山下ブランドの草木染黄八丈、菊地洋守さんが作るする八丈織です。
菊池さんが作る黄八丈はマンパワーが限られているため生産量がごく少量です。「八丈織」は大変な人気で、当社でも一年以上のバックオーダーを抱えているほどです。原則別誂えとなっており、納期につきましても長期間となる旨ご了承ください。
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シンプルな八丈織の証、織の名手にラベルの豪華さ(他の産地のような)は不要
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菊池さんにしか織りなすことができないムックラとした質感。
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フワッと空気を含むように軽い八丈織、軽いものでは500gを切る重さ。
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小格子の中に綾織の美が光る。
※ 追記:2019年3月 残念ながら菊池さんは急逝されてしまいました。後継者の不在につき製作注文はお受けすることができませんので何卒ご了承ください。