本日12月26日で廣田紬の年内の営業が終了します。最終日は一…
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問屋の仕事場から
- 2024.07.18
- 工芸織物も値上げラッシュ、店頭価格も大幅UP!?
近年は物価上昇の気配が止まらず、廣田紬で取り扱う生地も調達コストが上昇し続けています。
コロナ禍があけて経済が回り出し物流価格が上昇、戦争によるエネルギー価格の高騰、円安により原料コストが大幅にUPしました。コストプッシュ型の値上げ加えて、政策による労働者の賃上げも相まって様々な商品コストが上がってきています。
ドメスティックなはずの伝統工芸織物についてもここにきて大きな値上げとなり、現在の仕入れ価格が10年前の販売価格と同じという恐ろしい現象が起こっているアイテムさえあります。
値上げの口実は産地やそれぞれの工房によって様々です。
・原材料費が上がった
・作業者工賃が上がった
・組合の体制が変わった
・補助金類が削減されて辛い
・いままでがギリギリでついに値上げしないと廃業だ
・主力加工先の工賃(人民元?)が上がった
・求人対応のため値上げしたい
・設備を更新したい
・インボイス制度のせいだ
・光熱費が上がった
製造問屋である廣田紬は物作りをお願いしている立場ですから、値上げを飲まざるを得ない状況です。不本意ですがそのまま卸価格に転嫁する流れになります。販売店も同じく価格転嫁となると、最終的には煽りを食うのは消費者になります。物価高による消費控えが報道されていますが、呉服の販売においてはどうでしょうか。
買取商品在庫をもつ専門店が安い?
面白いことに問屋催事型のチェーン店などでは価格がUP、一部の昔ながらの町の呉服専門店においてはお値段ほぼ据え置き、という状況が発生しています。
メーカーから問屋が商品を借り、その問屋が店頭で売る催事型のケースですと、まともに値上げされた価格が適用されます。しかし小売店が昔に問屋から買い取った在庫商品を売る場合は価格を値上げするわけにはいきません。その場合には据え置き価格で販売されているという流れです。特にWEB販売をしていない、力を入れていないお店では相場観からかけ離れたお宝の商品在庫が散見されます。
商品が陳腐化しない、貴重な工芸織物の場合は問屋が買い戻すケースも発生しているほどです。
昔ながらの町の呉服店(借入や賃料がなく余裕がある)は概ね商品の回転率が非常に低く、販売までに2、3年は当たり前、10年以上かかるものもあるでしょう。低い在庫回転率は経営指標として褒められたもんではありませんが、お客さんにとってはありがたいものです。
悪質な便乗値上げに注意
世間の相場が上がったからといって便乗値上げされる在庫商品もあります。昨年入ってきた商品(原価4万円)が今年入ってくる相場(原価5万)の場合、こっそりと値札を上げる場合もあるでしょう。初見のお客さんには気付かれなくても、一度見たことのあるお客さんからは信頼を失うことになります。
例えば昨今人間国宝に指定された祝嶺恭子さん(首里織)や新垣幸子さん(八重山上布)はその典型で、人間国宝が内定した瞬間にネットショップからは姿を消し、相場をあげて(箔をつけてから)再登場という流れになります。良識ある販売店は昔の価格を据え置いておられますし、そもそも問屋の仕入れ価格も大きく上がってくることはないのです。
様々な理由で値上げに動いていることは確かで、値上げ分が作り手や産地にしっかりと還元される仕組みであれば好ましいものです。しかし様々な流通ノイズが意図せぬ便乗値上げとなり、消費者の購入意欲を削いでしまっては元も子もありません。着物をよく知る年配の人は昔はもっと気軽に買える値段だったと口を揃えておっしゃります。
何事にも適正価格があり、それが維持できなくなった途端に需給バランスが一気に崩れてしまうでしょう。作り手、流通、販売店はお客様に納得いただける価格を示したいものです。