祝嶺恭子さんの工房からは彩色溢れる美しい道屯織九寸帯が作られ…
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問屋の仕事場から
- 2022.05.09
- 多色ボカシが美しい首里花倉織の帯
数ある琉球織物の中で、もっとも格式高いものであった首里花倉織、パステルカラーの横段ボカシの九寸帯が入荷してきました。
首里花倉織の特徴は「花織」と「搦織」の混成組織にあります。
花織は他の琉球の織物にも多用されているもので、「花綜絖」と呼ばれる綜絖を使い緯糸を浮かせて地模様を作っていきます。
また、平織りの組織の一部分に捩り(からみ)織を入れることで、その部分が透けて見えます。もじり織を作るには「絽綜絖」を使う必要があり、他の琉球の織物ではなかなか見られない技法です。
もじりの部分は透け、風通がよく涼感を演出してくれます。着尺では全ての箇所にもじり織りが入ることとなり、花織ともじり織を全ての箇所に入れていく首里花倉織りは大変な手間暇がかかります。一般的に首里名倉織が高価なのはこの為で、各種絹織物の中でもトップクラスの価格になっています。
大変高価な首里花倉織ですが、こちらの九寸帯の場合は少々話が別です。
面積自体が着尺の3分の1未満ですし、捩り織や花織はお太鼓と腹だけ施せば良いのです。さらに帯芯を入れて仕立てますので透け具合は重要ではありません。着尺の場合と異なり、もじり織の部分は最小限でアクセント程度に施されている感があります。
この商品は多色の横段ボカシがきいたパステルカラーのタイプ、多色の横段は「帯」としての柄をしっかりと主張してくれます。
首里花倉織のセオリーとしては捩織りの透け感や花織の技巧美が重要かもしれません。しかしこちらの商品力はパステルボカシの横段によるもので、「花倉織」は少々後付け感さえあります。
首里花倉織はその大変な手間から作家物化して価格が高くなる嫌いがありました。
元を辿れば王侯貴族の織物だったかもしれませんが、様々な魅力溢れる工芸織物がシノギを削る中、需要価格帯に応じた展開をしていく必要があります。
そのプライドを捨てることなく、どこかに気高さを内包した新しい首里花倉織を楽しみにしたいと思います。