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- ブログ -
問屋の仕事場から

2021.11.13
先染と後染のハイブリッド結城紬

事務所の引っ越し作業が進む中、古い見本帳から不思議な結城紬の見本裂が発見されました。

廣田紬の資料室の本棚には創業以来作り続けてきた結城紬の大量の見本帳があります。そんな生地見本のうち、1冊だけ特別なタイトルがついていました。

「更紗併用」

開いてみると縞柄の結城紬の一部に型染めが施されていて従来の結城紬ではなしえないデザインになっています。

縞を先に織り上げてから更紗を染めた帯生地。

特徴的な更紗の型染めと先染めのコンビネーション、長さ限られている見本裂ですが、その斬新で魅力あるデザインを十分に想像することができます。

紬の白生地に友禅を施すことは巷でよく行われています。しかしこちらは後染めの箇所を製織時に専用設計、生地を織り上げ、柄のある先染めの箇所を伏せて、後染めで更紗模様を表現しているのです。

縞だけではなく横に配置した意欲的なデザインもあり、着物になった時は楽しいだろうなと想像力を掻き立ててくれます。

極めつけは絣との併用、結城紬の生産が全盛期を迎え、様々なバリエーションが求められたからこそ許された極めて贅沢な代物です。

十字絣と更紗で縞を作り出した商品。

生地の右半分に亀甲絣の柄を配置、左を後染めとした意欲的なデザイン。

現在では高価な結城紬の白生地に染め加工をする胆力あるメーカーもほとんど見られなくなってしまいました。先染めと後染めのハイブリッド結城紬、技術的には再生産は不可能ではありませんので別注対応も可能です。

古き良き時代のノスタルジーともいえる逸品、今後も見本帳から興味深い商品ありましたら紹介していきたいと思います。

 


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