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問屋の仕事場から

2021.08.15
幻の200亀甲の結城紬 前編

決算に伴い社内の整理をしていると何やら物々しい木箱が出てきました。

本場結城紬と書かれた箱、販促用の高価な反物を入れる桐箱よくありますが、このような豪華な箱は見かけたことはありません。よく見ると漆がかけられていて、真田紐を通す穴までありました。

真田紐を通す穴が側面に2箇所。

箱を開けると、さらに重要無形文化財本場結城紬と記載された桐箱が、、、

中身の桐箱自体は結城紬の最上位グレード(160亀甲)の箱として使用されていたものです。外箱と内箱は箱書きの字体が異なりますので、中身の桐箱に合わせて外箱が誂えられたことになります。

箱を開けると、、、

当時、近所に専門の「箱書き屋」があり、事あるごとに書いていただいていた。

中身がなく、箱書きには200亀甲細工と記載がありました。

織物設計が廣田紬、制作が結真紬(廣田紬の系列製造元)、製織が添野さんという形です。

200亀甲とは反物の幅(1尺:約38センチ)に亀甲絣が200個一列に並ぶという事です。

大島紬では現在も200亀甲が作られていますが、結城紬において現在作ることのできるのは160亀甲が限界です。

物差しで巾を測る

200亀甲(実際は220亀甲)の大島紬、1反に100万個に及ぶ亀甲が敷き詰められている。

結城紬の160亀甲と200亀甲の違いは糸を細くして、織り密度を上げている点です。経糸の数は21算(1680本)と従来より2割以上アップ、そのために専用の筬を使わなければいけません。

現在作ろうとすると、仮に製織ができたとしても、200亀甲用の細い糸の確保はもちろん、絣づくりが困難です。現在も組合の検査基準では200亀甲が分類されていますが、昭和後期から平成の初めにかけて結城紬の技術が最高潮に達した時代だからこそ作ることができた産物なのです。

今作ることのできる最も細かい160亀甲の結城紬。

物々しい箱が催事などでショーケースに入っているとどのような代物か覗いてみたくなりますが、このクラスになると売り場では決して陳列されることなく、百貨店の限られた外商顧客にピンポイントで紹介するという形がとられていました。

今回は残念ながら販売済みにつき肝心の反物を紹介することができません。生地見本を貼り付けた見本帖が必ずあるはずですので探してみたいと思います。

資料室にある膨大な見本帖の中から200亀甲の結城紬を探し出すことができれば、後編という形で別途お伝えさせていただきますので、お待ちいただければ幸いです。

 

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