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問屋の仕事場から

2017.08.28
最初からビンテージ感あふれる結城紬

青い縞の紬

ジーンズなどに使われるデニム地ですが、着古したビンテージの味を良しとする傾向から、ほとんどの場合で人工的に何らかの加工がなされています。生地を柔らかくしたり、色褪せを演出したウォッシュ加工、着古したようなダメージ加工が行われます。正絹の着物の場合はそうはいきませんが、丁寧に作られた紬の場合ははじめから自然の恵と職人の手仕事がつくった最高の味わいを兼ね備えています。

写真の結城紬は明るめの藍地に半面に雨絣をあしらったものです。カジュアル着らしくデニム地を意識したような色使いとなっています。

今や普段着として世界的に広まったデニムですが、元々はフランス南部の都市(de Nîmes ドゥニーム )で産出される綾織物のことでした。産地の名前が世界的に広まった生地の名前になるのは大変誇らしいことで、日本の織物も頑張ってほしいところです。本来は手間暇をかけて作られていたものですが、機械化により大量生産されるようになりました。そしてジーパンなどのデニム生地は着古したような生地感を出すために、たいていが何らかの加工がされています。

その一例がこちら。

デニムの生地

着古したような加工を低コストで行うことができるデニム生地。

こちらはドラム(大型の洗濯槽)を使い、生地と小石を一緒に入れて洗うことで、表面を荒らす加工をしています。場合によっては砂を吹き付けたり、微生物に生地を食べさせるバイオ加工などもあります。色の脱色はオゾンやブリーチを使う化学的な方法が用いられ、レーザー光線で表面を任意に加工するなど、和装では考えられない方法で様々な工夫がなされています。大量生産のファストファッションでも、最新の加工技術により「味のある?」生地を作り上げることができます。

人が商品にビンテージ感を求めるのは、その古さが希少価値の創出につながったり、長年愛着をもって着ているような趣を演出してくれるからです。

一方の結城紬の表面を見てみます。

結城紬の拡大

本来は邪魔者である節糸すら上品に見える結城紬。

人工的な加工は一切行われない素の生地です。自然の恵みと、人の手仕事によるすばらしい生地は見て触れるたびに趣を感じることのできる、真に美しい生地だと思います。結城紬の生地を知ってしまうとビンテージ感などという価値観に疑問を抱いてしまうほどです。

デニムは世界的な織物になりましたが、本来の伝統織物としてのデニムはすで姿を消し、最新の加工技術で別物となってしいまいました。それはデニムの大まかな定義が厚手の綿の綾織であるという単純な条件だったからです。一方、結城紬はその材料から工程まで機械化が困難な唯一無二な織物です。機械化を進めれば進めるほど、本来の味が削がれて魅力のないものになってしまうことは容易に想像がつきます。

デニムの出世は羨ましいですが、誇り貴き結城紬の良さに改めて気付かせられました。

 

生地の拡大

ランダムに配置された経絣が織りなす雨絣。手紬糸は太さが全て異なる。

 

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