数ある琉球織物の中で、もっとも格式高いものであった首里花倉織…
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問屋の仕事場から
- 2023.07.27
- 祝嶺恭子さんの首里織着尺
先般、首里織の祝嶺恭子さんが国指定重要無形文化財「首里の織物」保持者として内定されました。その貴重な首里織の着尺を紹介いたします。
祝嶺恭子さんは染織家の柳悦孝さんに師事し、首里織の製作だけでなく、国内外に保存された琉球の染織品の調査・研究を行ってきました。ドイツの博物館の琉球王国時代の染織物の調査行い、ご自身の工房においては後進の指導・育成にも尽力されています。
今回紹介するのは絹紺地花格子着尺(青藍)、その名の通り紺地に色格子のデザインです。
※販売済みにつき在庫はございません
ただの格子ではなく、大きな格子に小さな格子を重ねる越格子(オーバーチェック)で、黄色、ベージュ、鳶色の3色が絶妙なバランスで配置されています。
さらに格子の交点が浮き織り組織となり、浮糸のカラーを主張した凝った作りであることがわかります。
細い格子を構成するベージュと鳶色の糸は不思議な糸づかいとなっています。
組織を拡大して確認してみると、2本が絡み合った双糸が使われていることがわかります。
組織を紹介しただけでも非常に凝った織物なのがわかりますが、その風合いも大変素晴らしいもので着る人をワクワクさせる逸品です。
作品集にも紹介されているものと同じタイプの商品で、他にも似た技法の着尺が作られています。
作品集はコロナ禍の2020年に発行された図録で、祝嶺恭子さんの作品の集大成とも言えるものです。一般には販売されていないもので、作品紹介だけではなく祝嶺さんの研究概要、これまでの創作活動の歴史が詰まった魅力的な内容に仕上がっています。
染織分野における人間国宝はこれまでは伝統工芸会系の方がなるケースが多かったのですが、祝嶺さんは国画会系のメンバー、さらに86歳にしてといいますから驚きです。祝嶺さんが人間国宝に内定してから、お客様よりたくさんのお問い合わせをいただいています。
人間国宝の箔がつくと商売っ気がでてくる方(流通周りが)もいらっしゃいますが、祝嶺さんの場合はその心配はなさそうです。研究一筋の学者肌の方ですし、これまでと同じペースで実直にものづくりがされるはずです。
祝嶺さんが生涯をかけて研究、その成果が還元された今回のような作品を目の前にすると、呉服という商売ベースで物事を考えるのが恥ずかしくなってしまうほどです。
この秋には祝嶺さんは官報で正式に国指定重要無形文化財「首里の織物」保持者として正式に認定されます。これからも末長く首里織の伝統、歴史を後世に伝えるべく、後進の育成に携わっていただければと思います。