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問屋の仕事場から

2022.05.15
絣ズレですら美しい結城紬の十字絣

結城紬の十字絣、目が粗くシンプルですが美しい手仕事の味が伝わってきます。

十字絣は経絣糸1本に緯絣糸が2本、合計3本が組み合わさったもので、実際は十ではなくキの字で構成されています。

十字絣の拡大、組織を拡大すると実際にはキの字であることがわかる。

亀甲絣と同じように反物の幅に十絣がたくさん並べようとすると大変な手間がかかりますので、手間に応じて商品価格がUP、数百万円ということにもなります。あまりにも絣作りが困難なので、昔のような細かな十字絣のベタ(反物全面に絣)を作成することはできなくなってしまいました。

冒頭写真の薄地に十字絣が入った3種類の結城紬、同じ十字絣でもその密度によってだいぶ表情が異なります。

好みは人それぞれですが絣が細かすぎず、粗すぎないタイプが人気です。十字絣がその存在を主張するバランスの良いサイズは、反物幅に70〜80ほど並ぶものに落ち着きます。

「ぐの目十字」と呼ばれる配列で十字絣が散りばめられています。使われている経絣糸は74本(6%未満)これに適合するように緯絣糸を打ち込んで合わせていきます。シンプルな絣ですが、1反あたりの十字絣の数は約4万個(交点は緯糸が2本なので倍)にも及び、絣糸作りと絣合わせを行わないといけません。

粗く見える十字絣ですが結城紬は全てが手作業、気の遠くなるような作業の果てに完成しています。

他の織物でも同様のシンプルな十字絣はありますが、結城紬の十字絣は見れば見るほど味わい深いものです。絣合わせのズレですら味わいとして許容してしまうのは結城紬ならではです。

大柄でシンプル十字絣でも絣ズレが味となっている。過去に製作した見本帳から。

大島紬や塩沢紬などに比べれば絣のピッチが荒いイメージの結城紬ですが、全てを手作業で行う絣作りは結城紬の方が困難な工程です。後継者不足で特に細かな絣を作ることはできなくなってしまいました。今ではごく限られた人しか作業ができず一部の工程は独占状態、価格の高騰にもつながっています。

少し前まで珍しいものではなかった結城紬の十字絣、ここにきていよいよ絶滅危惧種に。寂しいことですが、まだ作ることのできる職人が現役の今だからこそ購入しておきたいものです。

 

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