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問屋の仕事場から

2023.12.05
反物の陳列に欠かせない撞木

撞木(しゅもく)は反物など生地を陳列する道具で、廣田紬では大小様々な撞木が使われています。今回は反物の陳列に欠かすことのできない撞木について紹介します。

様々な着物が並ぶ展示会、絵羽仕立てした商品(振袖、訪問着)は柄全体が見やすいように衣桁(いこう)に掛けて広げて陳列されます。しかし同じ柄のリピート、繰り返しが基本の反物はその柄がわかる部分だけを展示すれば良い事になります。

そこで使われるのが「撞木」です。

「撞木」という言葉を調べてみると、仏具や鐘をつく棒のことが第一義のようです。特徴的なTの字のした頭部のシュモクザメは英語でハンマーヘッドシャークと呼ばれていますが、撞木はハンマーヘッドのT形状のことです。

呉服の陳列に使う撞木はそのT字の形から派生して、撞木と呼ばれていることになります。

呉服に使われる撞木は、トップの部分が少し出る程度で、大きくTの字とはなりません。仏具の撞木とは大きく形状が異なりますので少々不思議ですが、T字の衣桁があるように、過去はもう少しT字に近いものだったと推察されます。

種目のTの字のトップ、木製は少数派。

「撞木」といっても現代においては木製でできているものは少数派です。

廣田紬では大昔は竹製の撞木を使用していましたが、虫食いの危険性がある上、破損しやすくササクレたところに布があたってて生地を痛める可能性がありました。樹脂成型技術の進歩によってプラスチック製のものが出てくると、その使い勝手の良さから徐々にバトンタッチ、現在では一部木製のものを除いて全てプラ製の撞木に置き換わっています。

 

古い竹製の撞木は「拾う神あり」という形で別業者に引き取ってもらい、どこかで活躍していることでしょう。

さらにこの業界、廃業されるところも多く、撞木を引き取ってくれというケースも多々あります。廣田紬の展示会場は貸会場としても運営していますので、たくさんの撞木が必要となり、それらもありがたく活用させてもらっています。

※お近くでしたらお申し出いただければ引き取りに参ります。

丸帯が展示できるような幅の広い特殊品も存在

そんなこんなで集まった各種撞木ですが、高さがまちまちで、並べてみると9種類もありました。バランスよく集まったもので、1F、2F全ての会場で使用する場合でも、それぞれ過不足なく満遍なく使用して陳列が完成するのが不思議なところです。

一番小さいものが2尺(60センチ程度:鯨尺ではないことに注意)、一番長いものは6尺(180センチオーバー)ありました。

2〜3尺のものは洒落帯など、4〜5尺のものは柄のピッチが一定の小紋や紬、6尺は総柄の帯や附下など、反物の柄に合わせた用途があります。

一般的な樹脂素材のタイプは優れもので、収納しやすいよう脚の部分が回転して一直線になるように作られています。

収納に便利な足の回転機構、ラックにまとめて収納される

また、反物を途中で引っ掛けるフック機能があったり、足のところが枕となる形状になっていて、木製や竹製ではできない樹脂撞木のメリットになっています。

衣桁の製造もそうですが、撞木も作るところが減り、市場競争が働かなくなりました。樹脂化により様々な便利機能の進化がありましたが、これ以上の進化も望めません。しかし一度購入してしまえばほぼ壊れることはなく、陳腐化もせず一生モノの什器といえるでしょう。

 

様々な高さの撞木ですが、商品陳列時にどのようにバランスよく並べるかも、呉服屋としての腕の見せ所です。お客様に商品がよりよく見てもらうには、美しい売り場づくりが必要です。

商品自体の配置はちろん大切ですが、衣桁と撞木をうまく配置しないとごちゃついた売り場の印象になります。問屋目線で見ていると、よく売る呉服屋さんはとてもセンスの良い美しい陳列をされます。

普段は光の当たらない存在ですが、撞木は呉服関係者なら必ず使うアイテムです。多くの商品を扱う問屋や大規模な呉服催事はプラスチックの従来タイプを使うのは合理的ですが、その昔は家具屋に別注したりと、衣桁や撞木にもこだわっていた時代がありました。

アマゾンでも色付きの撞木が販売されているようです。

特別なディスプレイには木製や漆塗りのものを使ってみるのも粋なものです。

以上、今回は売り場づくりの影の主役とも言える撞木の紹介でした。

昭和のノスタルジーの残滓、竹製の撞木。

 

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