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問屋の仕事場から

2021.09.11
リーズナブルなシンプル縞格子の「綿さつま」

綿薩摩(薩摩木綿)は需要に共有が追いつかない、流通サイドでも取り合いになるほどの稀有な織物です。経緯絣の手の込んだ商品ともなると、絹である大島紬を大きく上回る高価になります。しかし「綿さつま」と呼ばれる縞や無地の商品ともなると憧れの薩摩木綿をリーズナブルな価格で手にすることができます。

精緻な本さつま

精緻な薩摩絣、亀甲絣と十字絣を併用した逸品。

大島紬の技法から作られる精緻な綿薩摩、その美しさは当時のインフルエンサーである武者小路実篤が「誠実無比」と称したと言います。細いエジプト綿を使用したその生地は、繊細で上質な肌触りを提供してくれます。他にも様々な綿織物がありますが、綿薩摩の上質な風合いが他の綿織物と一線を画す所以となっていることは確かです。

エジプト綿を使った上品な肌触り、憧れの薩摩木綿ですが、動力織機で織られた縞柄や格子柄であれば数分の一という価格で手にすることができます。

ちなみに薩摩木綿は総称で、現在は東郷織物さんの独占ブランドとなっていています。手織りのタイプを薩摩絣、動力織機で作られたものは「綿さつま」「さつま絣」とネーミングされています。織り込みには共通して「本さつま」と記載されていて混同しやすいので注意が必要です。

縞柄や格子柄は「絣糸作り」と「絣合わせ」の工程が不要です。さらに製織工程は動力を使いますので、手織りとは比較にならない速さで織り上げることができます。

こちらの墨黒の商品、遠目には無地に見える生地でもちょっとした工夫で、細かな絣にも見間違うほどの美しさになります。近づいて見てみれば、Tの字が連続してカタスの絣のようにも見えます。

これは絣のように見えますが、糸の配列の工夫で絣のような視覚効果を生み出しています。

組織を拡大してみると、一本も絣糸は存在しないことがわかります。

絣を使わないものの、精緻な絣に見える演出、プロでも見間違うほどの出来栄えです。

廉価(比較的)な綿さつまですが、肌触りは上質な薩摩絣そのもの、80番手のエジプト綿を使用した上質なコットンの風合いです。

さつま木綿/さつま絣は、単純な縞格子だけではなく、「万筋」や「みじん格子」と呼ばれる独自の柄で仕上げられているものがたくさんあります。製造元はただでさえデザインに拘りがある東郷織物さん、シンプルながら独自デザインの妙が光ります。

着物好きの「あがり」とも呼ばれる薩摩木綿、リーズナブルな「さつま木綿」にも注目してみてはいかがでしょうか。

 

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