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問屋の仕事場から

2020.02.20
翠緑に輝く宮古上布の帯

宮古上布といえば深い紺色がトレードカラーですが、鮮やかな緑色の商品も作られています。

作家物などで鮮烈な緑の着物を見たことがある方もおられると思います。宮古上布の着尺ともなると高級車が買えるほどの代物、なかなか現実的な価格ではありません。

新垣玲子さん作の宮古上布着尺、木精(こだま) 作品展パンフレットより。

しかし帯であれば比較的手軽(?)に求めることができます。

緑色は青色と黄色を組み合わせることで作られます。宮古上布は全て自然の植物染料を使うのがルールですので、青は琉球藍、黄は主に福木から染料を得て両者をかけ合わせます。

自生する琉球藍、蓼藍とは異なる品種である。

福木の黄色が強ければ黄緑色が、藍が強ければ濃いグリーンとなります。冒頭写真の九寸帯はいくつかの染糸を組み合わせた縞のグラデーションとなっています。

車輪梅で染めた茶色の糸がアクセントで、緑色を際立たせるのに一役買っています。

苧麻糸は全て一つ一つ手作業で績まなければいけない宮古上布、全ての糸の太さがまちまちで、撚り具合も異なります。組織を拡大してみるとその様子が用意にみて取れます。

この九寸帯は福木から得られる黄色をベースですが、藍をベースとするとさらに濃い緑を得ることができます。

こちらは濃い緑の商品、グッと深く締まって見えますが、絶妙なグラデーションが存在感を主張します。

八寸帯、仕立てで芯が入らないのでより素材感が演出される。

さらに藍が濃いのがこちら、鶯色のような渋い色味を出しています。

藍がベースの九寸帯、緯絣で花模様が腹、太鼓に。

こちらは宮古上布は新里玲子さんのもの、淡く明るめのパステル緑、控えめな存在感を演出したい時に持ってきたいものです。

淡い黄緑ベースにランダムな緑の緯糸が走る新里さんの八寸帯。

一口に緑といっても天然染料ゆえ、季節や染めのロットによってばらつきがありますし、糸の太細によっても見え方が変わってきます。

宮古島といえば美しい海ですが、自然豊かな緑も忘れてはいけません。宮古上布に使用される様々な天然染料は全てに自生する樹々から得られます。翠緑の美しい帯からはそんな生命力溢れる南国の緑が伝わってくるようです。

藍色だけではない宮古上布を知ってもらえれば幸いです。

紺碧の海とのコントラストが美しい宮古島の緑。工事中の伊良部大橋を望む。

海と森をイメージして。紺地に映える緑色の帯。

 

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