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問屋の仕事場から

2018.03.14
可憐な星々が煌めく読谷山花織着尺

美しい読谷山花織

沖縄の織物の特徴のひとつに花織が挙げられますが、その中でも際立って繊細な美を放つのが読谷山花織の着尺です。糸を浮かせて花びらのような柄を作る浮花織ですが、読谷山花織は夜空に浮かぶ星々に例えることができるほど可憐です。 

読谷山花織は沖縄方言で「ゆんたんざはなうい」といい、中国や東南アジアから伝来した絣や浮織の技法を読谷独自のものにして織り上げた物です。他の沖縄の織物と同じように琉球王府のための御用布として作られていました。500年以上の歴史をもつ織物でしたが、時代の波に押され衰退、戦後は人々の記憶から忘れ去られてしまいます。

沖縄戦の際には米軍が読谷山に早々に上陸、基地を展開します。復帰前でも村の面積のほとんどを占め、村の経済は基地労働に頼らざるをえませんでした。危機感をもった村は村興しの一環としてこの「幻の花織」を産業として復活させるように働きかけます。

一度は失われた技術でしたが、高齢者の幼少時の見聞記憶を伝にして与那嶺貞さんを中心とする愛好会が復元に成功させました。そして1976年には読谷山ミンサーと共に伝統的工芸品にも指定されます。本来は木綿が多用されていたものですが、現在は高級絹織物として知られるようになりました。

 

早速商品を見ていきます。

冒頭の商品は黒地に縞、一部に横絣が入っています。そして繊細で美しい花織が散りばめられます。一つ一つが細かい点(ドット)で浮かび上がり、それらの組合せで独自の柄を作り出しています。

細かな浮き織

一つ一つの浮糸が星のように浮かぶ、地糸が黒いほど魅力的に輝く。

その昔は奢侈禁止令により地元の読谷の人々ですら濃い色(黒や紺)しか着用してはいけなかったといいます。しかし地色が濃いほど花織が浮かんで煌びやかに見えることも事実です。

この花織の織り方は、別の色糸を織り込み刺繍していく方法と、綜絖を使って緯糸を浮かせる方法の2種類が組み合わさっています。基本的な文様は銭花、風車花、扇花の3種類で、これらを組み合わせて30種類にも及ぶ文様が作り出されます。

銭、扇、風車、3種類の基本形

読谷山花織の緯浮花織は生地の裏側にあそび糸が通ります。裏側を覗いてみると浮糸の見えない部分がたくさん走っているのがわかります。このままでは引っかかってしまうので裏生地をつけて袷にする必要があります。

生地の裏を走る糸

あそび糸が通る生地裏、案外中綿の役割をしてくれて暖かいかもしれません。

模様が複雑になれば使う綜絖の数も増えて手間がかかります。綜絖を手足を駆使して織り上げられる着尺は2か月程の時間を要することになります。中には20枚以上の綜絖を使う商品もあります。織りあがるまで気が抜けず、手足を煩雑に動かし続ける大変さは、同じ沖縄の織物でも高速でじゃんじゃん織りあがる琉球絣の比ではありません。

そして花織は他の琉球の織物にとどまらず、本土で作られる織物でも多用されるようになりました。織機による自動化が可能で、コストダウンされた商品が流通するようになりました。しかし読谷山花織のような精緻な織物になるとイニシャルコストとの関係で簡単にはコピーされません。

産地としても他の花織と差別化するために必ず絣を入れるようにしたり、工程を分業化せずに織物一反一反を最後まで責任をもって一人が作り上げる作家物のような存在に昇華させています。

数ある花織の中でも際立って可憐な読谷山花織の着尺、これからも特別な存在でありつづけるでしょう。