備後絣は広島県福山市域で作られている綿織物で、伊予絣、久留米…
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問屋の仕事場から
- 2022.02.04
- お値打ち縞十字絣の綿薩摩
憧れの綿薩摩(薩摩絣)ですが、十字絣の綿薩摩は製造に高度な技術を要し、年に20反に満たない生産数、限られた呉服店の店頭にしか並びません。やっと出会うことができてもその価格には躊躇しています。そんなときは十字絣調に工夫された柄をチョイスするという選択肢があります。
こちらの生地、藍地のベタ十字絣に見えます。細かすぎず、ほどよい間隔で並び十字絣の存在感が出ています。
十字絣に見えるこの生地、十字は十字なのですが、実は従来の経緯の絣糸を組み合わせた十字絣ではないのです。
少し拡大してみます。
よく見てみると縦糸に縞が走り、緯糸の絣との交点が「十字絣」として浮かび上がっているのです。
別アングルからの1カット、経縞1本に2本の緯絣糸の組み合わせであることがわかります。従来の経緯絣を組み合わせた十字絣ではありませんが、名付けるとすれば「縞十字絣」でしょうか。
さらに組織を拡大してみます。
緯絣糸の地色(黒)が、他の緯糸(藍)と異なるのは、微塵格子を作り出す意図的な視覚効果、織元(東郷織物)の意匠性の高さを感じてしまいます。
そしてこちらは同じ手法で作られた別の商品、
先ほどの緯絣は2本だったのに対し、こちらは倍の4本、大きなポツ絣を作り出して十字絣とは異なるテイストに仕上がっています。緯絣糸だけでも柄はそれなりに出ますが、経縞を差し込むだけで高級感が増すのは不思議なものです。
さらにこちらは白地により大きなポツ絣を配置したもの、十字絣感はありませんが同様に縞と緯絣がうまく組み合わさって複雑模様に見えてきます。
従来の十字絣と比較してリーズナブルなこれらの縞十字絣、デザインセンスも負けず劣らずの逸品です。「ヨコソ」と廉価版扱いすることなくその美しさをお確かめいただければと思います。