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- ブログ -
問屋の仕事場から

2021.06.03
紬の精神に通じる“mederu”のプロダクト

過日、廣田紬の社屋利用して行われた宝飾品の展示会(mederu CARAVAN’21Spring & Summer 京都展)、 ジュエリーブランド“mederu”の紹介です。

“mederu”は東京南青山にアトリエを構えるジュエリーブランドで、各地のお客様向けに季節ごとの移動展示会(mederu CARAVAN)が開催されています。

南青山のアトリエ、店舗

今回の京都展では、京町家である廣田紬の社屋をお使い頂きました。伝統的な京都の和空間と、煌びやかなジュエリーの世界観がうまく調和するかと当初は危惧していましたが、“mederu”の製品哲学に見事にマッチした会場になりました。

mederu CARAVAN’21Spring & Summer 京都展 2階から中庭を望める座敷にて。

お客様をお迎えする会場作りも、商品の陳列を含め、ライティング、什器の設置、椅子や机の配置にも、“mederu”独自のこだわりが感じられました。特に好評だったのが縁側に設置したデスク(反物の陳列台を手直して作成)、自然の光の元で商品をじっくりとご覧いただくことができました。

本ブログでは問屋という当社の立場から特定の販売業者様の記載は避けてきましたが、“mederu”の製品哲学が、紬をはじめとする伝統工芸織物に少なからず共通するものがあると思い紹介させていただきます。

mederuのシンプルなリング、金属工芸も奥が深い。

 

日常に寄り添う生涯のパートナー

世の中にものが溢れ消費が飽和する中、商品のライフサイクルの短さが加速しています。「便利さ、速さ、安さ」が優先される現代社会においては、性能の進化が著しいスマホや家電製品に限らず、衣食住すべてにおいて「売れれば良い」という製品設計になってしまいます。

「エシカルファッション」認知のため、ショーウィンドウに積まれた衣服。@NY

例えば呉服の世界においてメイン商材となっている振袖。成人式を迎える数十万人という女性のために、ボリューム層を狙った商品設計がされます。コスト的な制約から手間をかけた商品を作ることができませんし、振袖に特化した振袖屋や、大手チェーン店での販売がほとんどになります。メーカーは商品を大量生産し、各販売店に販促HP含め、販売手法ごとマニュアル化して販売します。有名人を起用した広告を打ち、チラシやSNS広告で集客、成人式というビックイベントを狙って販売する特殊なビジネスモデルが醸成されています。

売り上げを求めて拡大、破綻した悲劇のはれのひ事件。

一方、紬といった趣味の商品は、本当に好きな人のためだけに細々と作られています。作り手や売り手にとっても、先の振袖ビジネスとは違う意識を持っています。作り手としては、末長く使ってもらえるような品質、一過性の流行に流されることがないデザインの商品哲学があります。販売サイドとしても売り上げ至上主義ではなく、お客様の着物人生に伴走して行きたいという意識を持っています。

 

前置きが長くなりましたが“mederu”の哲学も紬に通じるもの、

全国展開するような売り上げ至上主義の宝飾ブランドや、数百万以上のハイジュエリーなどの煌びやかな世界とは一線を画した世界があります。

“mederu”はお客様に作品サンプルを直接見ていただき、サイズなどをヒアリング、お客さんに合わせたジュエリーを作り上げるスタイルをとっています。いわゆるカスタムオーダースタイル、着物でいえば別誂ということです。

誰にでもわかりやすい宝石の煌びやかさや、ゴージャスなマテリアル感といった価値観と距離を置き、素材の持つ本当の魅力を重視、工芸職人が作りだす手仕事の美しさにこだわった物作りがされています。

自然の揺らぎが作りだすパールは個性が豊か、自然美を体現している素材。

妥協することなく丁寧に作られたそれらの作品は100年先でも新鮮さを持って受け入れられる価値を持っています。実際に昔のヨーロッパのジュエリーをオマージュして作られた作品を見ていると、現在作られている煌びやかなはずのジュエリーがどこか色褪せて見えてくるほどです。

西洋文化の中のジュエリーの宝石観を、東洋的な色彩美や季節感によってリファイン。

厳選された素材と熟達の手仕事によって生み出される“mederu”の作品、さりげなく普段使いできるジュエリーは生活の質を豊かにしてくれます。地味ながらも鈍い光沢を放つ紬も同じことが言え、そんな「粋」を好むファンが少なからず存在します。

 

そんな紬の精神に通じる“mederu”のプロダクト、紬ファンにも知ってもらいたい特別なブランドです。京都での販売会は終了してしまいましたが、“mederu”の移動販売会、6月は札幌、福岡、長崎の3箇所で催されます。

お近くの方はぜひチェックしてみてください。(要予約)

“mederu” ホームページ  https://mederu-jewelry.co.jp/#home

インスタグラム https://www.instagram.com/mederu_jewelry/

インスタグラムより

展示会をきっかけに知ることになった“mederu”の商品哲学、良いものは良いと改めて再認識させられました。別業種から学ぶことも多く、得られたたくさんの気づきは、今後の商品づくりに生かして参ります。

 

※廣田紬(株)では“mederu”商品の取り扱いはございません。お問い合わせや購入希望者の方は直接コンタクトをお願いします。

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