伝統的工芸品に指定されている近江上布、その知名度の割には店頭…
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問屋の仕事場から
- 2019.12.05
- 表千家ご用達の畳の高宮縁 〜幻の高宮布〜
畳の入れ替えを行った廣田紬の2階広間、お世話になった畳屋さんから大変興味深い話を伺いました。表千家においては伝統を守り、藍染をした麻生地を畳縁に使用しているのです。
畳縁は畳表の保護材として長辺に施されます。
スタンダードな平織の無地から、ジャガード織機で織られた家紋入り、近年ではキャラクター物まで様々なタイプが作られています。
お寺さんは独自の紋が入った畳縁を使いますし、昔は位によって使うことのできる畳縁の種類が決まっていました。
京都の一般家庭では綿の無地タイプが主流ですが、地方に行けばいくほど紋入りの派手な色になっていく傾向があり、極端なケースですと犬猫専用の畳縁も開発されているほどです。
現在では様々な意匠、多彩な畳縁が存在する一方、表千家においては伝統的な畳縁が使い続けられています。麻縁と呼ばれる高級品で、それを藍染めしたものは「高宮縁:たかみやべり」と呼ばれています。
廣田紬の畳替えをお願いした高室畳工業所さんはこの高宮縁を使用した最高級畳を誂えていらっしゃいます。藍染めの高宮縁は防虫効果があり、利休が好んで使ったと伝えられています。時代の流れと共に様々な畳縁が表れるようになりましたが、表千家のみがこの畳縁を使い続けています。
こちらが高宮縁をつかった畳(廣田紬の畳ではございません)。
通常の畳縁と異なり、緯糸の節が目立つことがお分かりでしょうか。さらに擦れの影響で藍が薄くなっています。普通のお席では見ることができない何とも味わいのある素晴らしい畳縁です。
こちらが高宮縁の布地、麻の白生地から藍を七回染めた平織の生地です。
染め上った高宮布と麻の白生地(廣田紬扱いの麻の暖簾生地)、並べてみると組織が酷似しており驚きでした。
表千家で使われる高宮縁、その名前の由来は近江上布のルーツとなった高宮布です。現在使われている高宮縁は苧麻ですが、本来は大麻から作られていたことになります。伝統を守ってきた表千家ですが、さすがに大麻の糸を使って畳縁を作るとなると現実的ではありません。
畳の縁は踏まないのがマナーですが、どうしても負荷がかかります。後染めの高宮縁は擦れると、染まりきらなかった芯の部分が現れて白くなっていきます。摩擦堅牢度の強い先染め織物とすることである程度この問題を解決することができるのではないでしょうか。
大麻の糸を使った藍の先染め織物で真の高宮縁を蘇らせてみたいものです。