タップして閉じる

- ブログ -
問屋の仕事場から

2024.11.10
圧巻の芭蕉布展 @沖縄県立博物館

芭蕉布をテーマにした展示は大変人気があり、近年も各地(倉敷、大阪、京都、東京等)で開催されてきました。そのなかでも直近で沖縄県立博物館/美術館開催中の芭蕉布展が素晴らしい内容でしたので紹介します。

今回の展示は令和6年度博物館特別展、喜如嘉の芭蕉布保存会50周年記念という形で、博物館の企画展示室、特別展示室を使って10月1日〜12月1日の2ヶ月間に渡っての開催です。

沖縄県立博物館・美術館は「おもろまち」に位置し、空港から30分程度(モノレール20分、徒歩10分)の場所にあります。前身は首里にあった県立博物館で2007年に移転して美術館も併設される比較的新しい博物館です。これまでの展示会と比較して予算、規模ともに最大のもので、喜如嘉の芭蕉布保存会はもとより国内の様々は博物館、学術機関の協力で展示品が集められました。やはり地元だけあって力のかけよう、キュレーターの質が大変高く、本当に魅力的な展示に仕上がっています。

展示室の様子、写真撮影が可能なのはありがたい。

展示は4つのテーマに分かれ展示されています。

1、美しい布 芭蕉布

芭蕉布とは何かを様々な芭蕉布の着物を通じて視覚的に訴えかける内容

2、布文化を支える植物

材料である糸芭蕉のこと、どのようにして布になるかを説明

3、芭蕉とシマの生活誌

奄美から与那国まで方々で作られ、江戸でも使われていた芭蕉布の民族誌

4、喜如嘉の芭蕉布

今日でも伝統を守る喜如嘉の芭蕉布保存会、平良敏子さんの紹介

4つのテーマに分かれての展示、ポスターから。

それぞれ圧巻の展示量で、これまでに見たことのない資料が目白押しです。特に3の島々の芭蕉布においては沖縄本島の各地、奄美大島、八重山諸島、宮古諸島、久米島で作られた芭蕉布を紹介、交易品として様々な形で芭蕉布が使われていた資料が展示されています。

私たちが知っている一般的な芭蕉布と違い、本当に様々な使われ方がされていて興味深い一級品の資料に見入ってしまいます。

獅子舞のヒゲの部分につかわれている芭蕉の繊維

芭蕉布の火事羽織、耐火性があったのであろうか江戸で使われていた。

巻きスカート、琉球王国時代の神女の正式な衣装だった。

布地として芭蕉布も圧巻の数が展示されていて、今ではなかなか再現が難しい独自の技法も見ることができます。琉球王朝時代は芭蕉布は最も親しまれていた布で、王族、士族、庶民、男女それぞれの布文化がありました。それを一挙に見ることのできる展示はここを除いて他はないでしょう。一つ一つをゆっくり見ていくと巡回に2時間程度は要するので注意が必要です。

展示されていた様々な芭蕉布の生地、図録から。

上流階級向けの繊細な生地、絽織と組織織の組みあわせ。

展示会の順路の終わりには芭蕉布の無地(ムジナー)が舞っていました。学芸員の方に聞くとサミットの晩餐会にて使われていたそうです。昔は首里城の宮殿で同じように上から吊るされていたのでしょうか。今ではなかなか作ることができない逸品です。

おそらく本土からこの展示会を目指して来られたのでしょう、芭蕉布の着物を着た女性の二人組を見かけました。芭蕉布展をやるとどこにでも駆けつける芭蕉布フリークが一定数おられます。世の中に伝統工芸織物は数多くありますが「芭蕉布」は圧倒的集客力を誇り、このような素晴らしい展示会をすることでさらにブランディングに磨きがかかっています。

産地の生産状況が年々厳しくなってはいますが、平良敏子さんが守り抜いた喜如嘉の芭蕉布の新しいストーリーが楽しみです。

 

 

 

廣田紬にご興味をお持ちくださった方はこちら
詳しくみる