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問屋の仕事場から

2021.11.18
経緯100%紬糸、諸紬の久米島紬

過去の見本帳からの珍品シリーズ、今回は諸紬の久米島紬を紹介します。

事務所の引っ越しに伴い見本帳を見返す機会が増え、今まで製造してきた過去の商品のバリエーションの豊かさを再発見しています。

久米島紬もそのうちの一つで、過去に様々な商品を製作してきました。

数十年に渡り製作してきた久米島紬の見本帳。

廣田紬では沖縄がアメリカ軍の施政下にあった頃から久米島紬を取り扱かっています。今でこそ重要無形文化財となり、存在感を増していますが当時は知名度が低く、技術レベルも現在のものと比較にならないものでした。

色見本帳、島の自然から生み出される素朴な色合い。

廣田紬では奄美大島から大島紬の技師を派遣、品質向上を図ります。それまでの主力製品であった結城紬、大島紬に次ぐ第三の紬として久米島紬を位置づけました。専属工房で製造される廣田紬オリジナルの久米島紬は、QCD全てにおいて優位性を持ち、看板商品となったのです。

現在では作り手の高齢化もあり、ごく少量の生産になってしまいましたが、久米島紬に対する思い入れの深さは格別のものがあります。

さて、幾多の見本帳の中にある「経緯紬糸」のタイトルは一冊のみです。久米島紬は経糸には平滑な絹糸(生糸)を使いますが、こちらは経糸にも紬糸を使っているということです。

経糸に毛羽のある紬糸を使うことで緯糸の滑りが悪くなり製織が著しく困難になります。紬糸を使うことによるコスト増もあり、久米島紬を含む一般的な紬は緯糸にだけ紬糸を使うことが多いのです。

※参考:紬とは? 後編

そんな中、あえて経糸に紬糸を使った商品を作ったのは、諸紬(経緯100%紬糸使用)である結城紬の風合いの良さを認識していたからです。

そんな諸紬の久米島紬、見本帳を見てみます。

写真ではなかなか魅力が伝わりにくいのですが、経糸に紬糸が使われていることで布としての魅力が段違いに豊かです。

こちらの墨黒の網代模様の生地、おそらく男物かと思われますが、地厚のしっかりした風合いに仕上がっています。

生地表面からも諸紬の良さが伝わってきて、結城紬を彷彿とさせる仕上がりです。

組織を拡大してみると、経緯共に太さのまばらな紬糸であることがわかります。

織物好きにはたまらない風合いの諸紬の生地ですが、やはり諸紬を作り続けるのは困難で限定的な少量生産でした。現在は経糸何本かに1本、紬糸を混ぜて織ることで、味のある生地としています。

ノスタルジー見本帳シリーズ、諸紬の久米島紬の紹介でした。

 

 

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