全国の紬の原点ともいえるのが久米島紬です。はるか14世紀末ご…
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問屋の仕事場から
- 2018.09.28
- 表情豊かな泥染の久米島紬
泥染の織物といえば大島紬が有名ですが、久米島紬においても島の泥を使った泥染が行われています。今回は大島紬とは一味違った泥染の久米島紬を紹介していきます。
泥染と聞くと土の色素で繊維を染めあげるのかと思われますが色素の主役はあくまでも植物染料です。島の泥の中に含まれる豊富な鉄分を利用した媒染(絹と染料の結合を助ける)が目的で、正確には泥媒染といえるでしょう。
元になる植物の種類や泥の性質、染具合によって様々な表情を見せてくれます。植物は大島紬と同じように車輪梅(テカチ)も使われますが、久米島では主にグールと呼ばれるサルトリイバラの根が使われています。そして他にもクルボー、ユウナといった島に自生する様々な植物染料との融合で豊かな表情を見せてくれるのです。
興味深いのは同じ泥染の大島紬と比較して泥の色落ちがほとんどないことです。これは生糸と紬糸の差なのかもしれませんが、久米島も経糸に生糸を使用していますので興味深い謎ではあります。更に大島紬と比較して色味が少し赤方向に寄っていて、顔映りがよく見えるというメリットもあります。そして絣模様の場合は赤茶の絣足を引いているのも特徴で、素朴ながらも美しい手仕事の良さが光ります。
また、久米島紬の柄といえばツバメなどのを抽象化した伝統柄を思い起こしますが、廣田紬では縞、格子を中心にしてオリジナルデザインの商品を手がけています。絣を作るコストを削減できる分、価格もリーズナブルになりますし、活躍の場も広がることでしょう。
専属工房である安田英子さんの工房から織りあがったものをいくつか紹介します。
久米島紬といえば茶褐色が定番のカラーですが、明るい色を好む消費者ニーズを反映して少なくなっているといいます。そして通常の草木染に比べて手間を要することから、それがどうしてもコストに反映されてしまいます。
他の産地を探せば植物染料を使った良質な真綿紬はありますが、久米島のような泥染の紬を見つけることは困難です。島の豊かな自然と大地の恵みから作り出された泥染の久米島紬は使われる植物染料によって様々な表情を見せてくれます。大島紬のように大量(?)生産されることのない希少さもまた魅力の一つです。
唯一無二ともいえる泥染の真綿紬、ぜひ一度手にとってみてください。