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問屋の仕事場から

2021.06.18
コロナ禍でも打たれ強い紬 〜有名紬の生産統計から読み解く〜

着物の着用シーンを激減させた新型コロナウイルスの蔓延、和装業界は大打撃を受けました。しかし不要不急なはずの「紬」カテゴリは生産統計ベースでは意外な健闘ぶりを見せています。

当初はすぐに収束すると思われていた新型コロナウイルス、2020年4月に発令された緊急事態宣言をきっかけにガラリと生活スタイルが変わってしまいました。百貨店は閉店、催事は中止、メインの顧客であった高齢層は家に閉じこもり、商流が止まってしまったのです。

経産省統計から、生活娯楽関係サービスの激減には着物着用シーンも含まれる。

この国においては外出自粛令を奢侈禁止令(慎ましく質素に暮らしなさい)とみなす風潮がありますから、着物を着て外に出歩くのはとんでもないという構図が生まれます。趣味の着物の代表である紬は紛れもなく不要不急の贅沢品、売れずに産地が更に疲弊しているのではないか、と心配される方も多いと思います。

事実、京都府が統計を取っている丹後ちりめん、西陣織の2020年の生産高は前年比でザックリと3割減となっています。

京都府織布生産動態統計調査から詳細をエクセルでダウンロードできます。

確かに留袖や訪問着といったフォーマル物は冠婚葬祭といった行事がなくなり、需要が消滅、影響が大変大きかったと言えるでしょう。しかし趣味の着物である紬については、生産統計を見る限りではコロナ禍で健闘している事実が浮かび上がりました。

以下、結城紬、大島紬、小千谷紬、産地組合が発表している令和2年度(2020年1月〜12月)の数量ベースでの生産統計です。

 

結城紬(本場結城紬、帯は除外) 694反  (前年比 -11.1%)

大島紬(本場大島紬 奄美産地のみ) 3385反(前年比 -7.1%)

小千谷紬(絣着尺に限定) 326反(前年比 +7.9%)

 

結城紬、大島紬は例年のペースでの然るべき減少率、小千谷紬に至っては生産数が増加しています。これらの紬はコロナの影響で生産が激減することはありませんでした。なお、石毛結城紬の白生地は3割減、小千谷産地の紬の白生地は4割減となっています。白生地は後加工されてフォーマル物に使われますから、産地が健闘したというよりは、紬というカテゴリーに起因することになります。

紬の白生地はこだわりのフォーマル物に使われる。ちりめん生地よりも高価な白生地。

趣味の着物である紬、必要に迫られて購入するフォーマル物と異なり、本当に欲しいから購入するという趣味性の高い商品カテゴリーです。数十万円もする普段着、まさに贅沢品、不急不要なものですが、その魅力にとりつかれた強いファンに支えられて、コロナ禍でも比較的健闘しているのです。

百貨店協会が発表する衣料品の売上高の減少率が30%ですから、洋服(フォーマルもカジュアルも合わせて)との比較でも大健闘していると言えるのです。

地味な存在だが、根強いファンが存在するのも紬。写真は久米島紬。

紬は好景気でバンバン売れることはありませんが、不況時に大きく下振れすることもありません。フォーマルが立ち行かなくなった呉服店、問屋もカジュアルシフトが進みそうです。これを機に少しでも紬の良さ(消費者、販売者共に)を知っていただける動きができれば、生産数の減少に少しは歯止めがかかるのではと期待してしまいます。

人も設備も稼働していないとナマってしまう。少量でも安定した生産が大切。

ただ、2020年の統計はコロナで消費が冷え込む1月〜3月が含まれており、先行して問屋サイドが発注していた受注生産分(約定分)も相当数含まれます。小売店の店頭売上、実需ベースで考えれば、2021年は厳しい内容になることに疑いの余地はありません。

更に元々の生産数が減りに減って底辺まできている状況で、少量生産の特殊品は不況の影響による弾力性が低くなっている背景もあります。

製造数が限られる高級紬はそもそも不況による弾力性が低い。写真は郡上紬。

呉服業界では最大手のリサイクルチェーンが破綻したのをはじめ、観光客目当てのレンタル業者が壊滅状態、自主廃業や事業譲渡などで業界再編が始まっています。市場規模は2000億円を割り込んだとも伝えられ、雇調金の打ち切りや、コロナ融資の返済が始まると、立ち行かなくなる事業者が今後ますます増えることでしょう。流通サイドだけでなく、製造サイドである産地も同様です。

前が動かないと、流通サイドの在庫は積み上がっていく。写真はイメージ(廣田紬の蔵の中)

好況、不況にかかわらず、紬はファンの強い思いに支えられています。こんな時期だからこそ心の拠り所になった、とまでは言いすぎかもしれませんが、本当に必要なものだったからこそ統計に現れるような結果となりました。真に愛される紬を少しでも盛り上げたく、廣田紬は微力ながら情報発信して参りたいと思います。

 

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