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問屋の仕事場から

2017.06.20
アイスコットン 本当に涼しいの? Q‐MAX値から検証してみる

アイスコットン襦袢

高温多湿の日本の夏において少しでも涼しく過ごそうと様々な工夫が行われてきました。麻に独特の縮加工を施した「近江ちぢみ」は麻独特のシャリ感に加え、肌にまとわらずべたつかない優れた夏きもの素材です。

そして綿麻の混紡糸を使用した綿麻着尺は麻のシャリ感と綿の肌触りの良さを併せ持った商品です。さらに接触冷感素材「アイスコットン」を使用することでさらに高次元のレベルで涼感を得ることに成功しました。

認証された製品にのみ付与される専用タグ。背景は生地は襦袢用生地。

接触冷感とはモノに触れた時にヒヤッと感じられる感覚のことです。冷たい金属やコンクリートなどを触った時にヒヤッとするのは、肌の熱が移動(熱が奪われた)したことで感じられます。アイスコットン(ICECOTTON)とはその名の通り、冷たい綿のこと。それ自体が温度を持つわけではありませんが、触れることで生地が肌の熱を奪い、ヒンヤリと感じる接触冷感機能をもった素材です。

ホームセンターなどでも接触冷感機能をもつ生地に触れたことがあるかと思います。

大手ホームセンターの看板商品、夏の冷感敷パットなどでおなじみ。

触れるとヒヤッとして気持ちがよい布、あの感覚です。普通はポリエステルなどの化学繊維で作られていますが、このアイスコットンはスイスのスポエリー社が開発した特殊紡績技術を使うことにより、天然素材である綿をつかって接触冷感を実現しています。

アレルギー体質の方や肌荒れを機にされる方は化学繊維を避けてきましたが、アイスコットンは綿本来がもつ肌に対する自然で優しい触り心地をそのままに、涼感を得ることが可能になっています。

こちらはアイスコットン糸と通常の綿糸のSEM画像の比較です。

繊維の比較

アイスコットン糸は特殊紡績技術で非常に大きな撚りをかけ、繊維自体に空気の層を含ませないことに成功しています。

緯糸に100%アイスコットンを使用した近江ちぢみを拡大しました。緯糸(茶色に染色したアイスコットン)は経糸に対して、糸自体が非常に細いものであることがわかります。

生地の拡大

緯糸(茶)にアイスコットンを使用。

そして従来はニット(編み物)が主体のアイスコットンの生地ですが、今回は技術的にも難しい織物で実現しています。緯糸に超強撚糸のアイスコットン糸を100%織りこみ、高度な技術で平織に仕上げるには幾度も試作を重ねなければなりませんでした。

経糸の綿麻は速乾性にも優れ、吸い取った汗をいち早く蒸散するのに役立っています。蒸れずにスウッと熱気が引いていく、涼しさの秘密はここにもあるのです。

縞着尺、綿麻の優しい風合い。

涼しさを定量的に表す指標としてQ-MAX値があります。生地に触れたときに冷たく感じるのは、肌から生地へ熱が移動するためです。この瞬間的な熱の移動量を測定したのがQ-MAX値で、数値が高ければ高いほど涼しい素材といえます。

アイスコットンのQ-MAX値を他の素材と比較

表面にシボ加工がされた、それぞれの素材について精密迅速熱物性測定装置を使い測定してみました。

 

 

アイスコットンを使用することで、同じ綿麻混率と比較して涼しくなっています。驚いたことに天然繊維で最高の接触冷感を誇る麻100%製品よりも涼しいという結果が出ました。

※この測定値は各布比較のための参考値で、非縮加工のアイスコットン襦袢生地はスポエリー社の基準(0.2以上で認証)だと実際には0.3近い数字が出ています。

商品ごとのに付属するアイスコットンブランドタグ、冷感素材の証である。

麻は強いシャリ感で涼感をもたらししますが、肌触りは綿の柔らかな肌触りの良さにはかないません。それを軽減するために綿の混紡率を上げていくとその分だけ涼感が損なわれるというトレードオフの関係にありました。しかしアイスコットンを使用することで、涼しさを犠牲にすることなく、肌触りの良さを両立することに成功しています。

夏の新しい涼感素材として、少しでも涼しく快適に過ごせるよう近江ちぢみも進化しています。是非お手にとってお確かめください。

アイスコットン生地の切り売りページはこちら(マスクも販売しています)

 

アイスコットン近江ちぢみの着尺、バリエーション豊富で男物も充実。

同じ素材の襦袢、縮加工がないため肌に触れたときに熱を奪う効果はより高い。


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